マガジン新世代ルーキーとして絶賛相次ぐ『GALAXIAS』。Ayase、Adoのアートワークも務めた作者が語る作品誕生秘話【インタビュー】
公開日:2025/2/21
期待の大型新人漫画家として注目を集める果坂青氏。2022年に開催された第108回「週刊少年マガジン新人漫画大賞」では最高賞に当たる特選を受賞、その上60年の歴史の中で史上最高得点を獲得したことで“マガジン新世代ルーキー”として熱い視線が注がれている。
そんな果坂青氏の初連載作となる『GALAXIAS』は、人間の少女・ジオが竜人の青年・ネレイドと出会い冒険をする王道バトルファンタジーで、単行本1巻が絶賛発売中だ。今回は、2025年もさらなる活躍が期待される果坂青氏にメールインタビューを敢行。『GALAXIAS』誕生の経緯やこれまでの歩みについて話を伺った。
怪獣映画みたいな漫画を描きたかった
――まずは、『GALAXIAS』誕生の経緯についてお伺いします。「週刊少年マガジン新人漫画大賞」で特選を受賞した同名タイトルの読切作品がプロトタイプとなっているとのことですが、読切の着想のきっかけについて教えてください。
果坂青さん(以下、果坂):もともと怪獣映画が好きだったので、そういう漫画を描きたいというところからスタートしました。 その手の漫画は近未来や現代が舞台なので、ほとんどの場合ジャンルとしてはSFに近い仕上がりになると思うのですが、あえてファンタジーっぽいビジュアルにしたら面白いんじゃないかと考えて世界観を構築していった覚えがあります。
――キャラクター名前や一部の設定は現在連載中の『GALAXIAS』にも引き継がれていますが、物語の展開や登場人物たちの行動原理などについては読切から大きく変更されています。連載版に辿り着くまでに苦労した点がありましたら教えてください。
果坂:世界観と主人公の造形です。一番大きい変更として、巨大怪獣が出てこなくなったので、それに合わせてキャラの役割や社会システムを文字通り丸ごと作り直しました。 そのおかげで高校時代から書き溜めた6〜7年ぶんの構想メモがほとんど出番なしになったのは悲しかったです(いつか使えたら使いたいです) 。
それから主人公のネレイド。連載化にあたり、連載漫画の主人公として話を引っ張っていけるような“強度”を持ったキャラにすべきという意識がありました。旅をする漫画ということで、記憶を失くして自分探しをする主人公という現在のコンセプトを思いつきました。


イラストレーター、漫画家として。果坂青が綴るこれまでの歩み
――果坂先生のこれまでも歩みについてもお聞かせください。マンガ家になる前はAyase(YOASOBI)さん 、Adoさんのアートワークを務めるなど、イラストレーターとして活躍されていました。どのような経緯でマンガ家の道を歩むことになったのでしょうか?
果坂:もともと小学生の頃から漫画家になりたいとぼんやり思っていて、自分で描いた漫画を友達に見せたりしていたところこれが結構好評で。担任の先生が職員室で印刷してクラスで配ってくれました。嬉しかったですね。
高校2年の頃から本格的に漫画家を意識するようになり、画力の向上とウケる絵のノウハウを掴むためにTwitterでの活動を始めました。そうこうするうちに今の担当編集さんから「週刊少年マガジン」に誘われ、それがきっかけで「週刊少年マガジン新人漫画大賞」に投稿しました。
――1枚の絵に自分の世界観や物語を詰め込むイラストレーター、一方でストーリー性やコマ割りなどを駆使して長期的な物語を描いていくマンガ家。両者は似ているようで全く異なる職業かと思いますが、両方経験されてみていかがですか?
果坂:本当に全く違うなという驚きがやはり一番に来ますね。楽器が弾けるからって作詞作曲できるとは限らないのと似てます。
とはいえ全く無意味ではなくて、パースや構図の感覚などは漫画を描くときにもかなり活きています。ただ、まだイラストレーター時代の良さを完全には落とし込みきれてない実感があるので、今後そのあたりもさらに発揮できればいいなと思っています。
――影響を受けた作家、作品がありましたら教えてください。
果坂:絵に関して一番影響を受けたのは『浦安鉄筋家族』の浜岡賢次先生だと思います。そのせいか口を大きく開けて笑う女の子が好きになってしまいました。高校に上がって以降は大友克洋先生や岸本斉史先生の影響がかなり乗っかってきた感じです。
作品に関していうと、『進撃の巨人』は物事への考え方の面で強く影響を受けたと思います。様々な局面で描かれる、理性と勇気をもって自ら苦しみへ向かう人間の姿が大好きです。
『GALAXIAS』もそんなふうに思ってもらえる漫画にしたいですね。
僕がいいと思うキャラ、言葉、演出を皆さんと共有して楽しみたい
――「画力がすごい」「キャラクター描写が良すぎる」「こういう話が読みたかった!」など、ネット上で絶賛の声が上がっている『GALAXIAS』1巻ですが、収録話の中で特に気に入っているシーンやセリフを教えてください。理由もあわせて教えていただけますと幸いです。
果坂:挙げるならやっぱり第1話ですね。セリフではなく会話になってしまうのですが ネレイドとジオの「私…どうすれば…」「そりゃ違うな お前はどうしたい」の部分です。何も知らないネレイドだからこその力強い一言が、現状に悩み停滞するジオに原初の衝動を思い出させてくれる。イカしたシーンです。そこでジオが「行くよ」って即答するのも好きですね。この漫画で描きたい“格好良さ”の本質に近いです。


――本作を通じて読者に伝えたいこと、また作家として実現したい夢がありましたら教えてください。
果坂:説教や押し付けではなく、自分がいいと思うキャラ、言葉、演出を読者の皆さんと共有して一緒に楽しむつもりで描きます。気軽に読んでください!
――最後に読者の方々にメッセージをお願いします。
果坂:街も山も空も全部ブッ壊すから、楽しみにしてくれよな!!
取材・文=ちゃんめい