奈緒×松田龍平でドラマ化!『クロサギ』作者による、外国人犯罪の裏側に「食」を通じて切り込む社会派エンタメ刑事漫画【書評】

マンガ

公開日:2025/2/18

東京サラダボウルー国際捜査事件簿ー黒丸/講談社

 新型コロナウィルスの影響も落ち着き、昨年の外国人観光客数は過去最多となりました。そんな明るいニュースがある一方で、時折メディアを賑わす外国人犯罪などから、外国人に対して漠然とよくないイメージを持つ人がいるのも事実です。しかし外国人と言っても、ひとりひとり境遇も事情も様々。そこで加害者・被害者どちらの立場の外国人とも接する国際捜査係の刑事と警察通訳人のバディを主人公に、彼らの生活、抱えている社会問題を描くのが『東京サラダボウルー国際捜査事件簿ー』(黒丸/講談社)。本作を原作としたドラマ『東京サラダボウル』もNHK総合で火曜よる10時から放送中です。

 有木野了は日本語が通じない外国人の取調べなどをする際に通訳を行う警察通訳人。担当する中国語の通訳件数は最も多く、多忙な日々を過ごします。そんな有木野が偶然出会ったのが、サソリを食べる緑髪の女性・鴻田麻里。

 国際捜査係の警察官である鴻田が、「無事でいるんだよね?」と涙ながらに電話する女性に声をかけたことで、2人の物語は始まります。

 出会いの経緯からもわかるように、鴻田はおせっかい。小さな案件でも困っている人を放っておけず、外国人ひとりひとりの声に真摯に対応しようとする姿は組織の中で「国際捜査のこぼれカス担当」と揶揄されることも。しかし本作では、彼女のそんな姿勢が大きな事件の手がかりを掴むきっかけを生み出します。

 一方有木野は冒頭から「通訳は感情移入しないので」と対象者にも警察組織にも一線引いた態度を取る冷静な人間……と思いきや、通訳人として働く前は警察官だったことが判明。あらゆるものに踏み込もうとしない態度には、何やら理由がありそうな気配を匂わせます。

 本作の見どころは、ふたりの奔走で点と点が繋ぎ合わされ、事件が解決していくストーリー。例えば中国からの帰化者である女性と日本人男性の間に生まれた子どもが誘拐される事件が発生。誘拐の動機を探るために夫婦それぞれを調べているうちに、事態は思わぬ方向へ進みます。その中で有木野は自ら作っていた壁を徐々に砕き、別の事件のため行動していた鴻田の行動が誘拐事件に繋がり、さらに今世界で実際に起きている問題を描く……。そんなあらゆる方向に散らばっている点を見事に繋ぐ物語を書いているのは、人気漫画『クロサギ』の作者・黒丸氏だと聞けば納得。期待が高まる方も多いはず。本作は監修に一般社団法人関西司法通訳養成所代表者の名が記されており、物語のリアリティも抜群。人身売買や技能実習制度の問題なども深く掘り下げられていて読み応えがあります。

 スリルある展開の中で、有木野が作った他者への壁を鴻田が蹴破っていくのもまた本作の見どころ。有木野の塩対応にもめげずに彼を世界各国の食事に誘っては(食事の描写も鮮明かつおいしそうで、ここにも丁寧な取材の跡が……)事件についてなど意見を求める鴻田。

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 そうして有木野の壁が砕かれていくうちに、彼が心の内に秘めていたとある事件についても知ることとなります。

 冒頭、鴻田は「東京都の外国人共住者数の割合はパーセンテージでは3.98%だけど、人数で言ったら55万人いる」と語ります。そのマイノリティを%ではなく一人の人間として捉えようという姿勢が、私たちに今まで見えていなかった、でも確かに近くで生きていたはずの人々と、彼らを巡る問題を教えてくれる『東京サラダボウル』。エンタメの中に社会問題を内包した良作です。

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