「喪服が白」の時代があった!? 現在の正式な喪服は?/毎日雑学
公開日:2025/4/28

●喪服は昔から黒だった?
「喪服は黒」。誰でも知っていることかもしれませんが、実はかつての日本では喪服は白の和装でした。それは神道の影響と考えられます。それが黒に変わったのは明治時代以降で、欧米の習慣にならったからです。
明治時代になると、皇室の方々にも洋装が推奨され、服装は和装から洋装になりました。本来、その国の民族衣裳は「正装」とされますが、皇室の方々が正式な場で和服をお召しになるのが稀なのは、当時からのそうした慣例のようです。
葬儀の場では、通夜、葬儀・告別式、一周忌までは遺族は喪服を着用するのが基本です。女性の正式和装は、黒無地の染め抜き五つ紋付きですが、最近は非常に少なくなっています。洋装は、黒のワンピース、スーツ、アンサンブルで、ハンドバッグと靴は、本来は喪服と同じ黒無地の布製が正式です。殺生をイメージさせないことから、革製品を避ける意味がありましたが、今はさほど気にしなくて良いでしょう。
喪主が男性の場合、黒のモーニングコートに黒かグレーの縦縞のズボンを合わせるのが正式ですが、最近は通夜・葬儀とも、遺族や近親者でもブラックスーツが主流です。ワイシャツは無地の白、ネクタイピン、カフスボタンは控え、ネクタイ、靴下、靴は黒で統一します。
一般参列者が通夜に伺う場合、女性は黒のフォーマルなワンピースやスーツ、アンサンブルが基本です。しかし「黒なら良い」というものではなく、光沢がなく、透けない素材で、肌の露出の少ない長袖や襟元のつまったデザインを選び、金属のボタンなどがないものが良いでしょう。バッグや靴も飾りの少ないシンプルなものにします。男性は、黒や濃紺・ダークグレーなど無地のダークスーツに黒のネクタイを締めます。
葬儀形式の簡略化に伴って服装もカジュアルになっているように思いますが、悲しみの気持ちを伝え、厳かな気持ちで葬儀に参列するのであれば、きちんとした喪服を着用されるのが良いでしょう。
文=明石伸子
明石伸子(あかしのぶこ)
NPO法人日本マナー・プロトコール協会 理事長
青山学院大学卒業後、日本航空室乗務員、会社役員秘書などを経て独立。2003年NPO法人日本マナー・プロトコール協会を設立し、文部科学省後援「マナー・プロトコール検定」や「コミュニケーションマナー検定」の開発、運営を実施。講演や研修などを通じて、それらの啓発・普及に力を注いでいる。
その他の役職:NHK経営委員、一般社団法人日本ホテル・レストランサービス技能協会理事。学習院女子大学非常勤講師など(2025年1月現在)。
主な著書、監修:「間違いやすい順 社会人のマナー大全」(宝島社)、「この1冊でOK!一生使えるマナーと作法」(ナツメ社)、その他、連載多数。
■日本マナー・プロトコール協会
https://www.e-manner.info
■コミュニケーションマナー検定
https://e-manner.net/
■マナー・プロトコール検定
https://mp-kentei.info/
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