SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第44回「グミ」

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公開日:2025/2/27

「グミ持ち歩いてる男の人、すごい嫌」
 ええええ。思ってもみなかった。ライブ会場であるとか、匂いとかではなく、物凄く根本の話だった。見えてないところから飛んできたパンチに私は目をシパシパさせた。
「え、グミが嫌なの?」
「私が好んで食べないっていうのもあるけど、そうじゃなくて。男の人の鞄からグミが出てくるってことが信じられないの」

 何やら面白い話が始まったと思い、私は身を乗り出した。

「グミ食べてる男の人が嫌なの?」
「ん、グミは食べてもいいよ。でもわざわざ買って、それを持ち歩いているっていうのがすごく嫌かも。どんなかっこいい男の人でも、例えば私がその人のこと良いな、って思っている男の人であったとしても、鞄からグミ出てきたら一発で醒めるかも」

 もう本当にさ、本当に私はこういう極端な話が大好きなのだ。私は目をキラキラさせながら矢継ぎ早に質問を重ねた。

「なんかさ、ギャップみたいにはならないの? かっこいいと思ってた人の鞄からグミ出てきたら、え、意外とかわいいみたいな」
「絶対ならないよ、だってグミだよ」
「え、え、『一つ食べる?』とか言われたら?」
「何言ってんの、ってなちゃうかも、グミだし」

 グミに身内でも殺されたんかこの子は、と思ったが、話の腰を折りたくなかったのでそのまま話を続けた。

「じゃあ、鞄から出てきたのがチョコレートだったら?」
「え。全然オッケーだよそれは」
「グミは駄目で、チョコは良いんだ」
「うん、もしもそれがアンパンマンのチョコとかだったら、それこそ、かわいいー!ってなっちゃう」

 酷い。偏見の権化が目の前で、照れた時の様子を私に見せている。

「じゃあさじゃあさ、彼氏になった人が、すなわち付き合った後ってことね。その人の鞄からグミ出てきたら別れるの?」
「いや流石に別れはしないよ。でも、それ絶対やめた方がいいよ、って絶対言う。周りから変な目で見られるよって」
「ん? それは自分が嫌だって思っているだけには留まらず、一般的にもグミが鞄から出てくるのは変だって思っているってこと」
「え、そりゃそうだよ。みんな思うでしょ」
「思わねエよ」
「鞄から直接裸の状態でお煎餅出てきた方がマシ」
「度し難えわ」

 その後しばらく、何は良くて何は駄目の話が尽きることはなく、この日は大いに盛り上がったのであった。

 やはり価値観というのは千差万別、十人十色だ。何とも思っていない自分の行動が、誰かにとっての地雷であったなんてことが、もしかしたら私の過去にもあったのかも。まだざっくばらんに話せる間柄になっていない時に、ほんの些細なきっかけ一つで、ガラガラピシャンとシャッターを降ろされてしまうなんてこと、もしかしたら珍しいことではないのかもしれない。でも一体何を気を付けたらいいのかわからないってところが、恐ろしくも興味深いところだぜ。家までの帰り道、私は鞄から取り出したグミを一つ口に放り込み、顎に手を当て唸ってみせた。

(※)ライブ観覧に際して、飲食を禁止している会場もございますので予めご確認の上、
正しいルールに沿ったご観覧をお願いいたします。

<第45回に続く>

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。2025年4月に結成20周年を迎え、SUPER BEAVER 自主企画「現場至上主義 2025」を4月5日、6日にさいたまスーパーアリーナで行い、さらに、6月20日、21日に自身最大規模となるZOZOマリンスタジアムにてライブを行うことが決定。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中