深夜のラジオから流れてきた「痛い!」「熱い!」と叫ぶ声。トラックドライバーたちの奇妙な体験談の数々に「ゾッとした」の声【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/3/3

 最新の書籍や人気の漫画作品の情報を発信する「ダ・ヴィンチWeb」。今SNSを中心に話題を集めているホットな漫画を、作者へのインタビューを交えて紹介する。

 トラックドライバーたちが遭遇したゾッとするエピソードが満載の『トラックドライバーの怪談』をピックアップ。

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 不気味な心霊体験や、日常に潜む危険など、トラックドライバーたちは日々様々な出来事に直面している。そんなドライバーたちの体験談の数々を、元・トラックドライバーの著者が漫画化。なかなか知ることのできない物流業界のエピソードに「もっと読みたい!」「怖いけど面白い!」と多くの読者が惹きつけられている。

 この記事では『トラックドライバーの怪談』の作者・ぞうむしプロ(@zoumushi_pro)さんにインタビューを行い、創作のきっかけやみどころについて語ってもらった。

夜道でラジオから聞こえた叫び声。自分の死角を横断する歩行者。様々な「ゾッとする体験」が日常に…

 トラックドライバーたちが集まる控室、通称「詰め所」。そこではドライバーたちが体験した様々な話を聞くことができる。

 Hさんは県境の道を夜間に走行中、車のラジオから「熱い!」「痛い!」と叫ぶ声が突然流れてきたという。

 そのエリアではラジオの電波は届かないはずなのに……。一体あの叫び声はなんだったのだろうか。

 かたやUさんは、信号待ち時の恐怖体験を語る。

 信号を待っていると眠気に襲われ発進するタイミングが遅れてしまったUさんは、対向車にクラクションを鳴らされてしまった。

 相手のすごい形相を見てなにごとかと思っていると、自分のトラックのグリル(バンパー付近)を掴んで歩くおばあちゃんの姿が。そのまま発進していたら、Uさんはおばあちゃんを轢いてしまっていたかもしれない……。

 ほかにも、サービスエリアで不思議な少年と出会う話、荷台から知らないおじさんが現れる話など、奇妙な体験談が語られていく。

43歳からもう1度漫画の道へ。トラックドライバーの仕事をもっと描きたい!

ーー『トラックドライバーの怪談』を創作した理由を教えてください。

 トラックドライバーは「ヒヤリハット報告書」を提出することがあります。そのヒヤリハットを漫画にしてみようと思い、描き始めました。(ヒヤリハット=重大な災害や事故に直結する一歩手前の出来事)

 ドライバーたちの不思議な体験もよく耳にしていたので、それらもヒヤリハットのひとつのエピソードとして描いています。「ヒヤリハット」から「不思議体験」「怖い」を着想し、最終的に「怪談」になりました。

ーー怪談話を手がけるうえでこだわった点はどこでしょうか。

 こだわったのはリアリティです。現役のドライバーさんに納得してもらえるような表現ができれば、物流業界以外の方にもトラックドライバーの世界が伝わると思うのでそこを強く意識して描いています。

 怪談のエピソードは、リアリティ、ユーモア、情緒の3つを大切にしていますね。とくに、ドライバーがそのまま話しているかのようなリアル感やあるある感を意識しています。

ーー『トラックドライバーの怪談』の中で気に入っているエピソードを教えてください。

「ハチハチ」というお話しの中で、雪のサービスエリアでバイクに乗っている少年(幽霊?)とトラックドライバーが会話するシーンが気に入っています。

 あとは「おれのグリル」でしょうか。信号待ちで停車しているトラックのグリル(バンパー付近)を手すりにして歩くおばあちゃんのエピソードなのですが、トラックの死角やその危険性、ヒヤリハット具合がうまく表現できたと思っています。

ーートラックドライバーから漫画家へと転身された経緯を改めてお聞かせください。元々創作のご経験はあったのでしょうか。

 10代の頃から漫画家を目指していましたが、20代の終わりに一度その道を諦めました。

 その後、家庭をもって子どもが誕生した時に「この子たちになにか誇れるものを手にしたい。そういう生き方をしたい」と思い、43歳からもう1度漫画の道に挑戦しました。

 トラックに乗りながら描いていくのが難しい仕事量になったので、専業漫画家になろうとドライバーを引退しました。現在は物流倉庫業を営みながら漫画家をやっています。

ーーのちに発表された『返納デイズ』では、高齢ドライバーの免許返納までの日常がカウントダウン方式で描かれていて、とてもドラマを感じました。このお話はフィクションとのことですが、モデルにされた方はいらっしゃるのでしょうか。

 主人公のケンは、早くに他界した友人がモデルになっています。

 ストーリーは、通学路の横断歩道に立っている「緑のおじさん」を見たことが着想のきっかけです。「緑のおじさん」が笑顔と挨拶を欠かさず、児童みんなに話しかけている姿に心を打たれました。

 元々、『グラン・トリノ』や『ファーゴ』(ドラマ版)のような老人がカッコいい作品を描きたいと思っていたので、まさにぴったりでした。

ーー物流業界をテーマに作品を制作されていますが、いままでどのような反響がございましたか。

「作品を読んでトラックドライバーになりました」という声や「会社の安全教育に使っています」など、様々なご報告をいただいたことがとても嬉しかったです。X(SNS)でもたくさん拡散していただき、各種メディアにも取り上げていただきました。

 そして読者のみなさんのおかげで『トラックドライバーの怪談 FIRST GEAR』(ぞうむしプロ/PICK UP PRESS)も刊行できました。

ーーボツになったエピソードなど、ここだけで特別に披露してもいいお話があればぜひお聞かせください。

 トラックドライバーは、よく怪奇現象を体験しています。うろ覚えですが、脳が疲労している状態だと幻覚を感じやすい、というドイツの研究があるんだとか。

 自分がドライバーを始めた頃は、働き方改革なんて言葉のないハードな労働環境でした。しかし最近はそんなハードさはあまり聞かなくなりました。

 ……ということで、「怪奇現象の原因は疲れなんですよ」と産業医さんに注意される、というオチの話を考えたことがあります。怪談にオチや理由を描くのはどうなんだろう?と思い、ボツにしました。

ーー今後の展望や目標を教えてください。

 トラックドライバー、物流業界の漫画をもっとたくさんの方に読んでもらうことが目標です。

 その目標のために、「元トラックドライバー漫画家がドライバーの漫画を描きトラックで全国に配達する」という企画を立ち上げました。北は北海道、南は鹿児島まで自分でトラックを運転し、漫画『返納デイズ』を配達するイベントです。

ーー作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

 いつも読んでもらえて嬉しいです。とても励みになっています、ありがとうございます。これからも楽しんでもらえるような漫画を描いていきますので、引き続きよろしくお願いします!

 またSNSでお会いしましょう!! ご安全に!

取材・文=ネゴト / あまみん

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