ダブル不倫で人生激変。嫁いびりの傷を癒してくれた上司と一線を越えた女性の末路【書評】
公開日:2025/3/8

婚姻関係は、互いの信頼を基盤に築かれるもの。不倫による裏切りはその信頼を根底から崩し、夫婦間だけでなく家族全体に深刻な影響を及ぼす。双方が既婚者であるダブル不倫の場合、その影響はさらに複雑で深刻だ。『お宅の夫をもらえませんか?』(みこまる:作画、いくたはな:原作/ KADOKAWA)は、そんな一例をリアルに描いた物語である。
主人公・なな子は、高校卒業と同時に農家に嫁いだ女性。嫁ぎ先では常に義両親から虐げられる毎日だ。夫からのフォローもなく、かといって他に逃げ場もない。閉塞感が募る中、なな子はふと目にしたパート募集のチラシをきっかけに、外に働きに出ることを決意する。
外で働く時間だけは、自由になれた気がして楽しかった。しかしそのぶん、家にいる時間がつらくなるばかり。そんな葛藤の最中、なな子はママ友の夫で、愛妻家で有名な職場の上司・忍とひょんなことから一線を越えてしまう。
地域のつながりが密接な田舎では、スキャンダルの類は瞬く間に広がる。案の定、ふたりの関係はすぐに、忍の妻・香織の耳に入ることとなった。夫の浮気を確信した香織が最終的に下した決断とは――。
本作の見どころは、不倫をされる側の悲しみや、する側の欲望だけでなく、双方の家庭の内情が詳細に描かれている点だ。作中の展開一つひとつに、多くの人が抱え込みがちな家庭内での孤独感や、他人には理解されにくい悩みがリアルに投影されている。
不倫という過ちを犯した主人公・なな子自身も、元をたどれば決して自己中心的な人間ではなかった。結婚して以来ずっと虐げられてきた過去さえなければ、彼女が不倫に走ることはなかったかもしれない。なな子の行動に完全には共感できなくても、どこかで「わかる」と思ってしまう部分があるからこそ、物語がより深く読者の心に響くのだ。
不倫により生じた歪な三角関係は、はたしてどのような結末を迎えるのか。登場人物それぞれの感情の揺れ動きや自己矛盾にもぜひ注目して読んでみてほしい。
文=ネゴト / 糸野旬