4大ミステリランキング完全制覇!話題の『地雷グリコ』コミカライズは「頭脳バトル」初心者にもオススメ【書評】
更新日:2025/3/3

「山本周五郎賞」「日本推理作家協会賞」「本格ミステリ大賞」の文学賞3冠に加えて、「ミステリが読みたい!」「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「本格ミステリ・ベスト10」という国内4大ミステリランキング完全制覇、その後も受賞、選出のたびに8冠、9冠と大きな話題となる青崎有吾氏の原作小説を『めだかボックス』(集英社)などで知られるベテラン漫画家・暁月あきら氏がコミカライズする。そう聞いて自然と高まった期待を軽々と乗り越えてくる面白さが『地雷グリコ』(白泉社)にはある。
本作は、やたらと勝負事に強い女子高生・射守矢真兎(いもりや・まと)が、グリコ、神経衰弱、ジャンケンといったお馴染みの遊びに一捻りを加えた独自のゲームで、対戦相手と火花を散らす頭脳バトルだ。第1巻では学園祭の出店スペースをめぐり生徒会役員との「地雷グリコ」での戦いが描かれている。

特殊なゲームをどのように攻略していくのかというロジカルな面白さと、キャラクターの心理面での駆け引きが、魅力の両輪である本作。小説の方が情報の密度が高く、コミカライズの際には、どの台詞を残すのか、何を絵に落とし込むのかの取捨選択を常に迫られることだろう。頭脳バトルともなれば、なおさらだ。そこに暁月氏のベテランの技が光っている。
幾重にも張り巡らされた罠、ブラフを交えた心理戦も、キャラクターの表情・仕草を視覚からダイレクトに捉えられるおかげで、目まぐるしく変わっていく「地雷グリコ」の戦況にも負担を感じることなく付いていくことができる。

台詞が多いという印象を受けることはないが、説明不足だと感じる場面はない。マンガとしてのテンポの良さを保ちつつ、原作小説の持つロジカルな面白さは損なわれていない。キャラクターの心情を自然と追えているからこそ、その一挙手一投足に込められた意図の理解が促されているように感じる。
「地雷グリコ」のルールは、通常の「グリコ」と比べると複雑だ。ここではその詳細は割愛するが、「全46段の階段を先に登りきった方が勝ち」という基本ルールのもと、キャラクターの立ち位置ひとつで戦況を把握できるというのもマンガという媒体ならではだろう。

またキャラクターにビジュアルが与えられたことも大きい。洞察力に優れ、謀略にも長けているが、普段の言動は軽く嫌味はまったく感じさせない真兎。暁月氏の描く真兎は、そんな彼女の二面性を強く表している(それでいてめちゃくちゃかわいい)。彼女がはしゃいでいる様子を追うだけでも、本作を楽しむことができる。

ただ話題の小説をマンガにしただけではない。マンガという表現に翻訳されることで、原作小説の持つ魅力を、別のアプローチで、これまでに作品が届かなった読者にも届けたいという意欲を感じる。「頭脳バトルは難しくてちょっと……」という方にこそ、手に取ってもらいたいコミカライズだ。