子どもの脳の成長期には自尊心が大切! 親が言葉で愛を伝えることが重要な理由/子育てのトリセツ

出産・子育て

更新日:2025/3/14

子ども脳からおとな脳へ変わるとき

 ヒトの脳は、12歳から13歳の間に大きくスタイルを変える。パソコンのOSが替わるようなものだ。

 12歳までの子ども脳は、感性記憶力が最大に働く。感性記憶とは、文脈記憶(行動やことばの記憶)に、匂いや触感、音などの感性情報が豊かに結びついている記憶のこと。

 12歳までの記憶は、それを想起したとき、感性情報が強く蘇ることがある。たとえば、小学生の夏休みに、田舎のおばあちゃんの家で昼寝したことを思い出したとき、雨上がりの竹藪の匂いが鼻の奥にふんわり広がったりする。あるいは、観光地に連れて行ってもらったことを思い出した瞬間、その日、口に入れていたキャンディの味を思い出したり。

 つまり、子どもたちの脳は、ことの成り行き以外に、五感が受け取った感性情報も丸ごと記憶していくのである。これらの感性記憶が、後の人生の発想力や情感の豊かさを決めるので、とても大事な記憶形式なのだが、これには欠点がある。一つ一つの記憶容量が大きすぎて、人生すべての記憶をこの形式で脳にしまうのは不可能だということ。さらに、大きな塊なので、検索に時間がかかり、とっさの判断には使いにくいということ。

 このため人類は、脳を、成長の途上で、もっと要領のいい形式へと進化させるのである。何かを体験したとき、過去の記憶の中から類似記憶を引きだしてきて、その差分だけを記憶するような形式である。これだと収納効率が圧倒的にいいので、「新しい事象」をどんどん覚えられる。

 さらに、過去の類似記憶との関連性をタグ付けして記憶していくので、関連記憶を引きだすのに長けている。この形式の脳だと、「人生初めての体験」に遭遇しても、過去の類似体験を使って、すばやく対応することができる。

 12歳から13歳の間に脳に起こる変化は、とてもとても劇的なのである。13歳から15歳までは、この新しいOSに慣れるための移行期に当たる。同時に、分別や忍耐を司る脳の前頭前野の発達期でもあり、社会の中に潜む悪意にも出会い始める時期である。

 思春期は、不安定な脳で、社会性に目覚めるとき。さながら、蟬が幼虫から羽化して、柔らかく透明な羽で、おずおずと飛び立つときのごとく。

 まだ家族に守られているにもかかわらず、脳は「一人ぼっちで世界に立ち向かう」ような気になっている。このとき、親に愛された自負は、自尊心の核となる。これがあれば、人は、そう簡単に自分を貶めるような行為には走れない。

 子どもたちの脳に、美しい真珠のような自尊心の核をあげよう。この世のすべてが彼・彼女を否定しても、絶対に消えない存在意義を。「あなたが生まれてきて、本当によかった。あなたに出会えたことが、母の人生で最も尊く、愛おしいこと」と。

 というわけで、「ことばで愛を伝える」が、この時期の子育ての最大のテーマだ。「勉強しなさい」「部屋を片付けなさい」なんて言っても、何の役にも立たない。そんな小言を言う暇があったら、愛を伝えてほしい。

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<第3回に続く>

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