「あなたの子どもはいじめの加害者です」そのとき、親はどう闘うのか?【書評】
公開日:2025/3/29

『娘はいじめなんてやってない』(しろやぎ秋吾/KADOKAWA)は、ある日突然「いじめの加害者」として名指しされた少女と、その母親の葛藤を描いた物語だ。「私はいじめていない」と否定する娘を、どこまで信じ続けるべきなのか。読んでいると、親としての気持ちが大きく揺さぶられる。
ある日、小学6年生の紫村俊介が学校の屋上から飛び降りた。命は助かったものの、意識不明の重体。現場に残された遺書から、いじめを苦にした自殺未遂と推測された。遺書にはいじめの加害者として「青空茜」を含めた数人の児童の名前が記されていた。
母親は茜を問い詰める。しかし茜は頑としていじめの事実を認めない。そんな娘の態度に引っかかりを覚えつつ、茜のことをなんとか信じようとする母。なぜなら、俊介には茜をいじめていた過去があったからだ。しかし、SNSで拡散される噂によって事態はどんどん悪化していき――。
本作は、「いじめの被害者と加害者」の物語で終わらない。本作で強く描かれるのは、「親の葛藤」と「SNS社会の恐ろしさ」 だ。
「うちの子がそんなことをするはずがない」そう信じたい気持ちと、「もしいじめが本当だったら……?」という不安。この茜の母親の苦悩は、多くの親にとって決して他人事ではない。
俊介の事件がネットで拡散されたことで、茜は決定的な加害者として扱われることに。SNS内の世論によって架空の真実が生み出され、家族は疲弊していく。「SNSでの正義」が、時に真実を見えにくくしてしまう恐ろしさを本作は描いている。
そして、物語を締めくくる鮮烈な1ページは、いじめ問題の本質をわたしたちに突きつける。
「本当の加害者は誰?」「いじめはどこから始まり、どこで終わるのか?」「子どもを信じて向き合うとは?」
読みながらそんな問いが頭に浮かぶ。大人として考えさせられる1作だ。