「年収と社会的責任! 俺とおまえどっちが多くて重いと思ってんだ!?」パワハラ夫が不倫をしていた。同じ境遇のサレ妻たちと結託し、復讐を誓う【書評】

マンガ

PR 公開日:2025/3/13

サレタ側の復讐~同盟を結んだ妻たち~雙葉葵:原作、きら:作画/DPNブックス

 パートナーの浮気が発覚したとき、怒りと悲しみに呑まれ、心身ともに打ちのめされてしまう人は多いだろう。しかし、そのまま泣き寝入りする必要などない。一歩踏み出す勇気を与えてくれる作品が、『サレタ側の復讐~同盟を結んだ妻たち~』(雙葉葵:原作、きら:作画/DPNブックス)だ。

 タイトル通り、夫の裏切りに屈せず、自分の人生を守るための第一歩を踏み出す覚悟を決め、“復讐同盟”を結んだ3人の女性たちの織りなす物語だ。

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 主人公・奈津子は結婚して3年、一流企業に勤める夫のために尽くしてきた。朝昼晩の食事をつくり、家を清潔に保ち、夫が快適に過ごせるよう心を砕く日々。平凡ながらも穏やかな暮らしが続いていたが、しかしその実、奈津子の心は疲弊しきっていた。家庭では横暴な夫は、些細なことですぐに機嫌を損ねては奈津子を怒鳴りつける。

 常に夫の顔色をうかがわなければならない生活が楽しいわけがない。それでも、経済的に夫に依存している以上、離婚に踏み出せない奈津子。

 しかし、表向きには平穏無事な日常はある夜、唐突に終わりを告げる。旅行の予定が急遽取りやめになり、早々に帰宅した奈津子を迎えたのは信じられない光景だった。

 玄関には、見慣れない女ものの靴が。家の中から聞こえる聞き慣れない声。普段なら感じない異様な空気。なんと、夫は奈津子の留守を良いことに浮気相手を連れ込み、夫婦の寝室で事に及んでいたのだ。

 見知らぬ女に顔を寄せ、無防備に触れ合う夫の満足そうな笑顔。幸福に満ちた笑い声。声すら出せず、呼吸すらできないような感覚に陥った奈津子はそのまま、ふたりが愛し合う一部始終を目撃してしまったのである。

 信じていた相手に裏切られたときの衝撃は、言葉にできないほど大きいものだ。積み重ねてきた日々の価値は一瞬にして失われ、残るのは一生忘れられない深い傷の痛みだけ。どん底から立ち直るには、多大な時間とエネルギー、そして信頼のおける仲間の存在が必要なのである。

 夫に裏切られ、悲しみに押しつぶされそうになっていた奈津子を支えたのは、偶然にも全く同じ境遇にあった友人ふたりとの再会だった。同時期に夫の浮気を経験し、同じように傷ついていた彼女たち以上に、奈津子の痛みを正しく理解してくれる相手はいなかっただろう。

 泣きながら話をし、同じ痛みを共有した3人は“復讐同盟”を結成。協力し合って浮気夫へ反撃することを決意するのだが――。

 本作の見どころは、夫の裏切りを経験した3人の女性がそれぞれのやり方で自分の人生を取り戻していく、その姿の逞しさだ。絶望の中で立ち上がり、手に手を取り合いながら新しい道を模索する姿は、読者に強い共感と勇気を与えてくれる。

 本作は、パートナーの裏切りにあった経験を持つすべての人に向けたエールともいえるかもしれない。主人公・奈津子は、そして同志である友人たちは、過去に縛られず新たな幸せを掴むことができるのだろうか。傷ついた妻たちの、怒りと誇りをかけた渾身の復讐の結末をどうか見届けてほしい。

文=ネゴト / 糸野旬

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