32歳で初期乳がん。私はこれからどうなるの? 乳がん治療に臨む女性の心の内を隠さず描いたコミックエッセイ【書評】
更新日:2025/3/26

『32歳で初期乳がん 全然受け入れてません』(水谷緑/竹書房)は、『まどか26歳、研修医やってます!』など医療系エッセイを手がける著者が、自身の闘病体験を赤裸々に綴ったコミックエッセイだ。初期乳がんの発覚から治療、その後にいたるまでの細かな経過や感情の機微がしっかりと記録されている。
32歳で乳がん検診に引っかかった、著者の水谷さん。乳がん治療に関する情報を探したところ、「治療によって妊娠しづらくなる」と耳にするなど不安は募るばかりだ。実際に乳がんと診断されてからは、さらなる不安が水谷さんを襲う。手術で胸がなくなるかもしれない恐怖、高額な治療費、長い治療期間…。水谷さんは山積みの問題とひとつずつ向き合いながら、治療を進めていく。
やがて乳がん治療を終えた水谷さんは、自分の胸中にひとつの大きな感情があったことに気がつく。本作は乳がん治療に臨む女性の、心の内すべてを包み隠さず描いたドキュメンタリー作品となっている。
水谷さんの父親は、6年前に膵臓がんと診断されたという。本作では、父親の闘病生活から死を迎えるまでについても、細やかな感情の動きと共に語られる。病気になって初めて聞いた父の弱音や、段々と死に近づいていく様子。その中でも必死に生きようとする姿には、我々も生と死について深く考えさせられる。著者が死について考えたり、健診を受けたりしたきっかけも、このときの経験に基づいているそうだ。
初期乳がんは治療の経過を記録しない人も多いという。発覚から寛解までのすべてを描ききった本作は、多くの人に求められる闘病記であると強く感じた。
病気になれば孤独を感じ、辛くなることも多いだろう。だがページをめくれば、同じく悩み苦しんだ著者の偽りない感情が寄り添ってくれる。自分はひとりじゃない、と勇気をもらえるはずだ。
文=ネゴト / fumi