SF小説の金字塔『ソラリス』を完全コミカライズ。漫画家・森泉岳土「原作をちゃんと咀嚼して漫画ができた」。原作翻訳者にもOKをもらったコミカライズのこだわり《インタビュー》
公開日:2025/3/20
装幀へのこだわり
――単行本で目を惹いたのが鈴木成一さんの素晴らしい装幀ですね。
森泉 鈴木成一さんの装幀が大好きなんですよ。それこそ漫画家になる前から書店で装幀が気になって手を取った本が鈴木さんデザインだったことがたびたびありました。まさか自分の本でデザインを受けてもらえるとは思いませんでした。
――デザインは異論もなく決まったのですか?
森泉 帯のイラストは当初は別のカットが使われていたんですが、自分が気に入っているカットをお伝えしたら差し替えてくださったりと、それぐらいですかね。

――森泉さんはご自分の本の装幀にこだわりはありますか?
森泉 モノとしての本が大好きなので装幀にはこだわりがあります。でも僕がこうしてほしいみたいなことはないですね。例えば漫画を描くときでも自分の頭の中のイメージのままだとつまらなくて、過程の中でアクシデントだとか思わぬことが起きて自分の想像を超えた絵を描けたときにすごく興奮するんですね。装幀も同じで、僕がこういう風にしてくださいって言って作ったら、僕が思っていた通りになるだけで面白くないんですよ。なので基本的に装幀家さんにお任せでお願いしています。
原作者、そして翻訳者のこと
――翻訳者の沼野先生からアドバイスなどはあったのですか
森泉 ハリーの手紙の文章を描くときに、その部分のポーランド語を教えていただけませんかということを編集部を通じて沼野先生へ連絡していただきました。
コミカライズでは原作のものと少し文章を変えているのですが、沼野先生にとって聖典であるレムの文章に手を入れるなんてちょっと抵抗があったようなんですけれど、それにはしっかりとした理由があることを説明したらご理解いただけました。

――沼野先生の(本作への)ご感想が気になります。
森泉 ネームから見ていただいていて、お褒めの言葉をいただきました。編集部から転送してもらった沼野先生のお褒めの言葉は、プリントアウトして壁に貼って励みにして漫画を描いていました。
もちろん原作者のレムさんに読んでいただいて原作通りだって言ってほしいと思いながら描いたんですけど、すでに他界されているので僕の中の想定読者は沼野先生なんですよ。沼野先生がOKを出していただけるんだったら、僕は原作をちゃんと咀嚼して漫画ができたなと思えるので。だからもう本当に褒めてもらって嬉しかったですね。
――最後に次回作や進行中の予定などあれば教えてください。

森泉 僕と安永知澄さん、おくやまゆかさんの漫画家3人でやっているリトルマガジンの『ランバーロール07』(タバブックス)が4月に出ます。中年特集の今回はロード・ダンセイニの原作小説「谷に棲む幽霊」をシルエット漫画でコミカライズしています。谷の幽霊と人間が会話をするとても幻想的でドリーミーな切ない話ではあるんですけど、谷の幽霊が「昔は良かった、こんなはずじゃなかった」みたいな話をずっとしていて、読み方によってはこれは中年だなと思って(笑)。何も知らないで読むとすごく切ない話なんですけど、中年視点で読むと滑稽にも読めるんですよね。その原作の持つふくよかな魅力がとても好きなんです。
インタビュー・写真=すずきたけし

プロフィール
森泉 岳土(もりいずみ たけひと)
マンガ家。1975年、東京生まれ。2010年、月刊コミックビーム9月号に「森のマリー」が掲載されデビュー。主な作品に『カフカの「城」他三篇』(河出書房新社)、『報いは報い、罰は罰』(KADOKAWA)、『セリー』(KADOKAWA)、『村上春樹の「螢」・オーウェルの「一九八四年」』(河出書房新社)、『爪のようなもの・最後のフェリー その他の短篇』(小学館)、『アスリープ』(青土社)、『仄世界』(青土社)、『佐々々奈々の究明』(小学館)。著書に、義父の大林宣彦監督との日々を綴った『ぼくの大林宣彦クロニクル』(光文社)がある。
『ソラリス(上・下)』(スタニスワフ・レム:原作、森泉岳土:著/早川書房)
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ソラリス──この静謐なる惑星は意思を持った海に表面を覆われていた。心理学者ケルヴィンは、惑星の謎を解明するべく派遣されたのだが……。人間を超える知性とのコンタクトは可能なのか? 連載中から絶賛の声続々! 人気作家が傑作古典を余すことなくコミック化。