SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第45回「スーパー銭湯」

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公開日:2025/3/27

 刺青は手のひら二つ分くらいの大きさではあったが、幸いにも箇所はお腹だった。入浴の際、タオルを巻き付けさえすれば間違いなく隠すことが出来る。なので私は完璧に隠し通すことを天に誓い、入り口へと歩みを進めた。

 無事に受付を済ませて、自分のロッカーに荷物をしまいこんだ。さア、入浴の時。刺青が隠れるようにお腹にしっかりとハンドタオルを巻き付けて、お風呂に続く扉をガラガラっと開けた。

 浴槽に数人、洗い場にも数人。そりゃもちろん人はいる。この方々に決して迷惑をかけぬよう、細心の注意を払って慎重に歩みを進める。だるまさんが転んだの時の歩き方。しかし、それが悪目立ちをしたのか、幾人かの視線が私に刺さる。バレたか? と確認するが、タオルは一切ズレることなくそこにあった。それもそのはず、取れてしまうことのないようにタオルは、身体が砂時計の形になるくらいまで強く巻いておいたからだ。

 顔のついた二本足の砂時計が歩いてりゃ、そら見るか、とも思ったのだが、どうも理由は他にありそうだった。私に目を向ける方達の表情は、押し並べて困惑している時のものに見えた。そして眉をひっそりと寄せ頭の上に「?」を浮かべている。一体どうしてだろうか、と思って歩みをコソコソと進めた私であったが、大きめの鏡に私の全身がしっかりと映し出されたとき、一瞬でその答えが明らかになった。

 鏡に映った私の隠蔽工作に抜かりはなかった。入れたばかりの刺青は完全にタオルの下にあり、おそらくどの角度から見ても見えることはない。ただ悔しいことに、抜かりがなかったのは隠蔽工作だけであった。

 私は刺青を隠すことに夢中になるあまり、ハンドタオルの幅をまるで考慮できていなかった。すなわち、お腹は見事に隠せているが、本来隠さなければならないところが何も隠れていなかった。

 単刀直入に書く。私のち〇ちんとお尻は、完全に丸出しであった。

 そもそも何も隠さない人もいる。そして隠すことを選ぶ方もいる。もちろんどちらでも構わない。ただ隠すことを選んだ人間は、下腹部を覆うよう、大事なところが見えないようにタオルを巻くわけである。だから今の私は、側から見たら一体何を隠したいんだかまるでわからない奇天烈な男に見えているというわけだ。本来より全然高い位置に巻きつけたタオルを神経質そうに押さえ、あたりの様子をキョロキョロと伺う下半身丸出しの男。「ねエ、隠せてないよ」と声を掛けたくなる佇まいだった。

 ち〇ちんとお尻を見られたとて、ちっとも恥ずかしくない。ただ隠したいのに隠せてない風に見られているであろう、ち〇ちんとお尻は、すごくすごく恥ずかしかった。

 教訓は一つ。
 刺青はよく考えてから入れましょう。
 
 あ、隠せるならいいですよってとこもあるけど、駄目だった場合、ルールは絶対に守りましょうね。定めた意図を読み解いて、そこに自分が該当しないであろうことがはっきりとわかっていても、駄目なもんは駄目なんだからね。ルールがあるところではルールを、ルールがないところではモラルを。どの口が言ってんだって話だけど。

<第46回に続く>

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。2025年4月に結成20周年を迎え、SUPER BEAVER 自主企画「現場至上主義 2025」を4月5日、6日にさいたまスーパーアリーナで行い、さらに、6月20日、21日に自身最大規模となるZOZOマリンスタジアムにてライブを行うことが決定。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中