「上手い絵を描けば評価される」は間違い?「好き」を仕事にしたい人は必読、注目のイラストレーターが自己プロデュース方法をわかりやすく解説【書評】
PR 公開日:2025/4/16

『コネ、スキル、貯金ナシから「好き」を仕事にするまでにやってきたこと』(フジワラヨシト/文藝春秋)は、SNSで総フォロワー数10万超の注目のイラストレーター・フジワラヨシト氏による、ブランディングやマーケティングを中心とした仕事術をまとめた初著書だ。本書の内容は、フジワラ氏がnoteで自ら発表し、多くの反響を呼んだ有料記事をもとに、大幅な加筆が施されたものである。
幼いころから絵を描くことが得意だったフジワラ氏は、イラストレーターとして生計を立てていこうとするも、一度はその道を挫折している。そんなフジワラ氏が夢を諦めきれず30歳で一念発起し、イラストレーターとして多くのファンを獲得するに至った背景には、セルフブランディングとSNSマーケティングにおける緻密な戦略があった。
本書では、フジワラ氏がどのような段階を経て、多くの人々に自身の作品を届ける土台を作っていったかが、わかりやすく記されている。イラストレーターだけでなく、ライターやデザイナーなど、自分自身が持つスキルによって生計を立てる職種に就いている人ならば、誰もが実践しやすいノウハウなのがありがたい。
数多くの実践的な戦略が記されているが、中でも印象に残ったのは、ストーリーや系譜を意識することで、商品(本書の場合はイラスト)の価値を高め、ブランディングにつなげていく考え方だ。インターネット上では、SNSを通じて誰もが自身の考えや作品を発信できるようになって久しいが、効果的な発信でなければ、多くの人の心はつかめない。仕事につなげる発信をするには、やはり工夫が必要だ。そのためにどんな考え方をすればいいのか、本書は驚くほど理解しやすく解説してくれる。
フリーランスを対象とした仕事術の本は数多くある。その多くは職種軸で技術的なノウハウをまとめているが、本書は“「好き」を仕事にする”というゴールに向かい、自己プロデュースに磨きをかけていく道筋に着目しているのが特徴的だ。もちろんスキルアップの重要性にも本書は触れているが、自己投資の観点から、どのようなアプローチが効果的か、汎用性の高い視点でまとめられている。
また、フジワラ氏はADHD(注意欠如多動症)の当事者でもある。一般的な社会人生活においては困難を伴う特性を持っていても、マインドセットや考え方を変えることで、それらは強みに変えられる。こうした成功者の実体験は、自分が輝ける働き方や居場所を探す人にとって、一筋の希望となるだろう。
自分が「好き」でたまらないことを仕事にしたいという方には、ぜひ本書を手に取っていただきたい。今日からでも実践できること、考え始められるヒントが詰まっている。この本を道しるべとして、多くの人が「好き」を仕事にできることを願っている。
文=宿木雪樹