障がい者専門風俗嬢の仕事とは? 長い間、タブー視されてきた「障がい者の性」。偏見や現実を知ることの大切さを教えてくれるコミックエッセイ【書評】
更新日:2025/4/2

「障がい者にも性欲ってあるの?」そう驚く人もいるのではないだろうか。『障がい者専門風俗嬢のわたし』(あらいぴろよ:漫画、小西理恵:原案/KADOKAWA)は、長い間蓋をされてきた「障がい者の性」の現実や偏見に立ち向かう「障がい者専門風俗嬢」たちを描いたセミフィクションだ。
主人公のつくしは、デリヘルで学費を稼ぎ念願の看護師として働いていたある日、動画配信で「障がい者専門の風俗嬢」の存在を知る。そこで語られていたのは、あることがないことにされタブー視される「障がい者の性」の実態だった。看護師として働く中で感じたモヤモヤをきっかけに、その世界へ飛び込むことを決める。障がい者専門の風俗店「またたき」の代表しずくと共に、さまざまな立場の利用者と向き合う日々が描かれる。
身体や精神的な障がいがある人、障がいがある家族がいる人など、多様な利用者が登場する本作。中でも印象的なのが、知的障がいがある弟の性に悩む姉むつみだ。「障がい者の性は家族でどうにかすべき」という無言の圧力と「家族でいたい、姉でいたい」という思いに押しつぶされそうになっていた彼女が、勇気を出した一歩がもたらした変化に、心を強く打たれた。
正しい性の知識を得ることや、人の温かさを体感することで、自分を取り戻し笑顔を見せる利用者たち。しかし社会では未だに「障がい者の性」は蓋をされたままだ。本作は何よりも「知ること」の大切さを教えてくれていると同時に、知らないことの危うさも伝えている。あるものをないものとされることの辛さを知るつくしたちだからこそ、さまざまな批判にさらされながらも現実を伝えようとする姿に胸を打たれる。
「障がい者専門風俗嬢」というとセンセーショナルに捉えられがちだが、本作が「障がい者の性」を知るきっかけとなり、人として当たり前の想いを誰もが尊重される社会へと一歩近づく助けになることを願う。多くの人に手に取ってほしい作品だ。
文=ネゴト / Ato Hiromi