満田拓也 『MAJOR』は海堂高校戦を最終回のつもりで描いた。幼稚園編から茂野吾郎プロ復活の可能性まで連載20年を振り返る【『MAJOR 2nd』インタビュー】

マンガ

公開日:2025/4/2

茂野吾郎の半生にけりをつけた

ーー「海堂高校戦を最終回のつもりで描いた」とのことですが、元々の構想では、メジャー編まで描く予定はあったのでしょうか?

満田:最初のビジョンで言うと、吾郎がメジャーリーグに行くと言って旅立ち、メジャーのマウンドに立ってる絵で作品を完結させるつもりでした。メジャーリーグそのものを描く気は全くなかったです。

 やっぱり、スポーツ漫画ってトーナメントの地区予選が一番面白いんですよ。エピソードがしっかり描かれたライバルと、負けたら後がない状態で戦うから盛り上がるわけじゃないですか。甲子園や全国大会でいきなり登場したキャラクターと戦っても、なかなか感情移入しにくいですよね。

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ーーそうですね、すごくわかります。

満田:ましてや、プロ野球やメジャーリーグなんてもっと難しいなと。優勝決定戦とかポイントを絞れば描けないことはないけど、基本的には少年漫画に向いていないテーマだと思います。『グラゼニ』の「年収」みたいな角度があれば、大人向けの漫画としては面白くなるんですけどね。

ーー結果として『MAJOR』はアメリカに渡ってからもWBCを彷彿とさせる国際大会や、ワールドシリーズなどを描き、30巻以上も連載が続きました。

満田:先ほどお話しした「後がない」という状態をメジャーリーグの世界で作るのが難しく、メジャー編を描いていた当時は毎週苦しんでいましたけど、「つまらないものは絶対に出したくない」と思っていました。結果として「メジャー編が好き」と言ってくださる読者さんが多くて、頑張って描いてよかったと思っています。

ーー最終回のラストはとても感動的でした…。

満田:ありがとうございます。第1話をなぞることで茂野吾郎の半生を描いた作品にけりをつけたという自負はあります。長く読んでくださった読者さんへの責任は一応なんとか取れたかなと。

「絵が古い」と言われたらサンデーで描くべきじゃない

ーー『MAJOR 2nd』についてもお聞かせください。小学生編を経て、現在は中学生編がクライマックスを迎えています。

満田:小学生編は吾郎の息子、大吾の「2世の葛藤」をテーマに描きました。中学生編は「女子野球」が大きなテーマで、僕的には主人公は佐倉睦子なんです。群像劇というか、睦子を中心としたたくさんの女子キャラクターで優等生の大吾を囲むような、自分なりのハーレム物を描いているような感じです(笑)。

ーー過去のインタビューで「果たして自分は女性キャラクターの描き分け、キャラ付けもできるのだろうかという、新たな挑戦をした」と語っていました。以前から満田先生の描く女性キャラは評判だったと思いますが、やはりそこは力を入れられているのでしょうか?

満田:僕は熱血の野球漫画を描きながらも、女性キャラクターはかわいいと言われたいんです(笑)。女性に限らず野球のシーンも含めて、今でも絵については精進しているつもりです。やっぱり「絵が雑になった、古い」と言われるのが一番の屈辱。

ーーそこはもう、プライドみたいなものがある?

満田:そう。もし「絵が古い」と言われ始めたら、もう僕はサンデーで描くべきじゃないと思うんですよ。だから、絵に対するモチベーションはめちゃくちゃ高いです。

ーー群像劇という言葉もありましたが、王道の睦子はもちろん沢さんやアニータ、千代姉など様々なタイプの女性キャラがみんな魅力的だと思います。

満田:ありがとうございます。そこだけは頑張ってますから(笑)。

吾郎の復活はあるのか?

ーー最後にひとつだけ質問させてください。どうしてもファンとして夢想してしまうのが「吾郎の復活」なのですが、可能性はあるのでしょうか?

満田:それね。それは、うん…ときどき考えます。吾郎は野球選手として年齢的にはきつくなってきましたけど、引退はしていないわけで。まあ、漫画の世界だしやれなくもないかなって。ただ、そうは思うんだけど、いざ描きはじめてめちゃくちゃな展開で吾郎のキャラを崩してしまったら、それこそ読者に対する大きな裏切りなので。

 『MAJOR 2nd』はあくまで大吾の物語ですし、吾郎の野球人生晩年のストーリーは「少年サンデー」でやっちゃいけないと思うんですよね。それはもう『あぶさん』みたいなものなので(笑)。

ーー少なくとも今は、大吾の物語である『MAJOR 2nd』を描き切ることが最優先だということですね。

満田:はい、中学生編は責任を持って最後まで描き切る必要があると思っています。その先の甲子園やら、さらに飛躍した野球人生を描くとなると、一度踏み込んじゃったらそこの責任も取らなきゃいけなくなるじゃないですか。僕ももう還暦なのでいつまで描き続けられるか不安もあり、中学生編以降のことはまだちゃんと決めていないんです。

ーー本日何度も「責任」という言葉を使われていますが、読者に対しての責任感みたいなものが執筆のモチベーションになっているのでしょうか。

満田:そうですね。それはすごく大事なことだと思っています。やっぱり、あなたのような、10年20年と長く読んでくださっている読者がたくさんいてくださる作品だと思うので、その方々をガッカリさせるようなことは絶対にしたくないんです。漫画って終わり方がすごく重要なので、ちゃんと『MAJOR 2nd』の最終回を描かないといけないなと思っています。

ーー『MAJOR』『MAJOR 2nd』と20年以上、吾郎ファミリーを描き続けていますが、漫画家として全く違うものを描いてみたいという欲求はあるのでしょうか?

満田:それはさすがにもうないですね。先ほど吾郎の復活の話もありましたが、「ビッグコミックから声がかかったらそれもアリかな?」とか考えたりもするんです(笑)。でも、僕は少年漫画しか描けないタイプだとも思っていて。だから、そういった欲求は特にないですね。今、吾郎の家族を通して好きな野球を描いて飯が食えて、本当に幸せ者だなと思います。

取材・文=金沢俊吾

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