『東京喰種トーキョーグール』『超人X』の石田スイによる特別読切2作品が収録! 人気の少年歌劇シミュレーションゲームの前日譚を描いたコミック『ジャックジャンヌ FOLIAGE 〜アンバー・オニキス〜』
PR 公開日:2025/4/17

友情、努力、挫折、勝利——あなたは、女性を中心に多くの人を虜にしている少年歌劇シミュレーションゲーム「ジャックジャンヌ」をご存じだろうか。『東京喰種トーキョーグール』『超人X』(ともに集英社)などで知られる漫画家・石田スイ氏が、原作、キャラクターデザイン、シナリオ、全楽曲の作詞を担当しているこのゲームは、男女両役を“男子だけでこなす”歌劇を学ぶ、ユニヴェール歌劇学校が舞台。いわゆる乙女ゲームかと思いきや、乙女的ドキドキもちゃんと味わえつつ、学生ならではの歌劇への情熱や葛藤がギュッと詰まったゲームなのである。特に演劇や芝居が好きならば間違いなく夢中になるだろう。作り込まれた設定にすぐに惹き込まれ、声優たちの演技力に圧倒される。そしてシナリオも緻密で、個性的なキャラクターたちの全ルートを試したくなってしまうのだ。
そんなゲーム本編の前日譚を描いた石田スイ氏によるコミック『ジャックジャンヌ FOLIAGE 〜アンバー・オニキス〜』(集英社)が刊行された。ユニヴェール歌劇学校では、クオーツ、オニキス、ロードナイト、アンバー4つのクラスがしのぎを削るが、本作で中心に描かれているのはアンバーとオニキス。ゲーム本編の1年前かつ、本編の中心に描かれるものとは別のクラスの物語であるが、本書のページをめくれば、すぐにその世界に惹き込まれてしまうだろう。
本書には「PUPPET」と「PARSLEY」という2つの短編が収録されている。「PUPPET」で描かれるのは、奇才集団・アンバーに首席入学した“俺”の物語。主役以外に興味がなかった“俺”は2年生となり、後輩としてやってきた田中右宙為にその座を脅かされることになる。
一方、「PARSLEY」で描かれるのは自分のことをパセリのように“添えもん”と思っていた菅知聖治。男役のトップ・ジャックエースになることを夢見てユニヴェール歌劇学校に入学した菅知は、入学早々自分には才能がないことを思い知らされる。そんな中、菅知は新規公演で女役のトップ・アルジャンヌに指名されて……。
ゲームをプレイしたことがある人は「PUPPET」には「ゲームで名前すら出てこないキャラが主人公!?」と驚かされるに違いないし、「PARSLEY」には「ゲーム内の先輩としての菅知しか知らなかったけれど、彼にこんな過去があったのか」と感慨深い思いにさせられるだろう。だが、「ジャックジャンヌ」のことを知らなくてもこの青春歌劇漫画は、痛いほど心を揺さぶってくる。2つの物語は、どちらも才能の物語。バケモノ級の才能を前に、凡人には何ができるだろうか。舞台は一人で作るものではない。まばゆい光を放つ者がいれば、その光を引き立たせるための存在も不可欠だ。だが、舞台の中心を目指す者からすればこれほど残酷なことはない。石田スイ氏の圧巻の描写力はまばたきするのも忘れさせられるほど細やかで、そしてその美しさが、台詞が、展開が、ズタズタと読む者の心を切り裂いてくる。どちらもとても短編とは思えず、長い芝居を観終えた後のような読後感があり、そして打ちのめされたような気分になる。
さらに、本書の刊行と同時に、スピンオフ小説『ジャックジャンヌ 玉阪の光跡』(石田スイ:原作・イラスト、十和田シン:小説/集英社)も刊行されるのでこちらもチェックしたい。あわせて読めば、すべての人が主役になりうる「ジャックジャンヌ」の魅力を存分に味わうことができるだろう。
原作ゲームファンが存分に楽しめるのはもちろんのこと、「気になっているがプレイしたことがない」という人は、まずは本書から手に取ってみてはいかがだろうか。舞台に立つことの厳しさと素晴らしさを痛感した時、あなたはきっと「ジャックジャンヌ」の世界から抜け出せなくなっているはずだ。
文=アサトーミナミ
