一番大切な親友の彼氏を寝とった女。自ら地雷を踏み抜き、親友にもバレてしまって…【書評】

マンガ

公開日:2025/4/18

©︎雁須磨子/祥伝社 FEEL COMICS

 40代の心に寄り添った『あした死ぬには、』の作者・雁須磨子先生の最新作『ややこしい蜜柑たち』(雁須磨子/祥伝社)は、愛情と友情が絡み合う三角関係ラブストーリーだ。

 美人だけど陰気な雰囲気を纏う清見と、天然系で彼氏が途切れないモテ女の初夏。ふたりは高校時代からの親友だ。清見にとって初夏は唯一の友達だが、彼氏が変わるたびに紹介してくる初夏の行動に意味を見いだせずにいた。

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 初夏から紹介された次なる彼氏は、将来有望でイケメンの年下大学生・白柳だった。初夏の提案でなぜか一緒に美術展へ行くことになった清見と白柳は、「初夏」の話で意気投合する。

 しかし、距離が近づいたことで清見は取り返しのつかない一夜を過ごしてしまう。目が覚めると親友の彼氏・白柳が隣で寝ていて……! パニックから暴走し始める清見。こうして「ややこしい三角関係」が始まっていく。

 淡々とした印象だった清見は、やらかした後からガラリと印象が変わる。反対に天然系でゆるふわに思われた初夏は、実は周りをきちんと見ていた女性なのだと気づかされる。本作は、予想もしないキャラたちの変化がなんとも楽しいのだ。

 反面、想像の斜め上をいく清見の言動は、若干共感しにくくもある。しかし、人はわからないからこそ気になってしまうもの。

 登場人物のひとりである林さんが、迷走する清見に対して「どうするんだろう……めっちゃ気になる」と感じるように、共感も理解もできないのに、いつの間にか気になるキャラクターになっていく清見。登場人物だけでなく読者も清見の不思議な魅力に引き込まれていくのだ。

 さて、清見に振り回された人生最低の半年を経験し、クールで揺らぎをはらむ社会人となった白柳。あの出来事から5年経ち、すっかり忘れたはずなのに、仕事で再び清見と出会ってしまったことから物語はさらに展開していく。

 清見の白柳への思いは? 初夏への感情は? 友情と愛情が交錯する彼らの行方を見届けてほしい。

文=ネゴト / Ato Hiromi

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