ついに完結!岩田剛典、田中みな実ら出演の実写ドラマも人気の漫画『あなたがしてくれなくても』。結末を迎えるまでの過程を振り返る【原作者・ハルノ晴インタビュー】
PR 公開日:2025/4/24
完全な善人も、完全な悪人もいない それぞれのキャラクターへの想い
――他に、漫画を描くうえで気を付けていたことはありますか?
ハルノ:一人をめちゃくちゃ悪者にしない、一方だけをすごくいい人にもしないことです。実際に生きている人間、みんなそうですよね。誰しもいいところも悪いところも必ず持っているじゃないですか。だから、新名さんは描くのが一番大変でした。最初はみちの気持ちをわかってくれる王子様的な存在だったので良かったんですけど、いざ新名さんの悩みを描こうと思ったときに「どこに人間味があるんだろう?」と悩んで。
編集:読者さんからアンケートを取ると、新名さんだけが人気というわけでもなくて。メインキャラ4人と華ちゃん、結構まんべんなく人気なんですよ。それはハルノ先生が各キャラクターのいいところも悪いところも上手に落とし込んでくださったからかなと思っています。新名さんはハルノさんの好きな男性像なんですよね。
ハルノ:まあそうですね。だってあんな人いないじゃないですか。存在しないから、理想の男性像なんです。まあ後半は「うじうじ野郎」とか言われていましたが(笑)。
――厳しいですね(笑)。主人公・みちは当初どんなキャラクターになる予定でしたか?
ハルノ:最初の設定はそこまでなかったですね。第1話は最初に出したネームを少し直したものでOKが出たので。私、キャラクターの設定表みたいなものをつくったことがないんです。
――ではお話を描いていくうちに固まっていったんですね。
ハルノ:そうですね。みちはいい子ちゃん風の、真面目で控えめな子。特徴があまりないというか、どこにでもいる子ですよね。それも「そうしよう」と思ったわけではなくて、陽ちゃんとかとのやり取りの中で、だんだんそういう性格になっていきました。セックスレスもみちだからあそこまで悩んだんじゃないかと思います。楓だったら悩まないかもしれないですよね。
編集:陽ちゃんに「わたしのことが好きなんじゃないよ、自分のことが好きなんだよ」と言ったシーンは、みちがすごく強くなったなと思いました。成長したからこそ、今まで言えなかったことをちゃんと言えている感じがあって。あのシーンは編集部の男性陣の中で「身につまされる思いだ」という感想が多かったんですよ(笑)。
ハルノ:それはね、もうずっと私が陽ちゃんに言いたかったことだったから(笑)。「お前は自分のことが好きなんだよ!」って。

――(笑)。ちなみに私は楓が好きで……。
ハルノ:楓は働いている女性から圧倒的な支持でしたね。私も働いているので、余裕がないと相手に辛く当たってしまうことってあるよなと思うんです。自分の仕事が上手くいっていないだけなのに悪かったなって落ち込んだりして。と言いつつ、最初はとにかく嫌な奴として描いていた気がします(笑)。
楓は新名さんとすんなり別れるかと思ったら、なかなか別れなかったのが意外でした。「なんでこの人新名さんと別れないんだろう?」って話を担当さんともして。最初はプライドだと思ったんです。「夫がいるという状態を失ってしまうことが自分にとって恥ずかしいことだ」みたいな気持ちなのかなと。でもその方向で何度かネームを描いたら担当さんと「なんか違うよね」となってしまって。悩んだ結果行き着いたのは、楓ってめっちゃ新名さんのことが好きなんだっていう根本的な気持ちでした。「そうだ、好きだから別れないんだ」という単純だけど納得いく答えが出て、ブレイクスルーした感じでした。
――ご自身が描かれている漫画のキャラクターなのに自分が思っていたこととキャラクターの動きや気持ちが違った、というのは、聞いていると不思議な感覚です。
ハルノ:なんかしっくりこないんですよね。実在する友達の話を他の友達にしている感覚というか。「この人こんなこと言うっけ?」みたいなひっかかりができると、いや違うな、と。なんとも言葉にできないのですが、私と担当さんの二人だけにしかわからない感覚だと思います。