二転三転した結末、決め手になったのは？

――陽ちゃんはいかがですか？

ハルノ：不倫漫画って夫が嫌な奴じゃないと女性読者の共感を得られないと思っていたので、最初はとにかく嫌な奴に描いていました。でも男性から「すごく気持ちがわかる」という声が多くて。意外でしたね。

――最初に「どの人物も嫌な奴なだけにはしたくない」とおっしゃっていましたが、陽ちゃんの変化はどう描いていったのでしょうか？

ハルノ：私はもっと前から陽ちゃんに「変わってほしいな」と思いながら描いていたんですが、みちに離婚を突き付けられるまでは本当の意味では変わってくれませんでしたね。離婚を言われたときに、ようやくそこから自分の何が悪かったのかを考えてくれたのかなと思います。みちと新名さんが結ばれる結末にしたいのに、なかなか変わってくれなくて苦労しました。

――ちなみに結末は連載開始の段階では決まっていなかったと伺いましたが、いつ頃から決めていらっしゃったんですか？

ハルノ：いつ頃でしたっけ……。現在の担当さんは4巻から一緒なのですが、引き継いですぐの頃、私は「みちと陽ちゃんの夫婦再生の物語にしたい」と言っていたみたいで。

――ではそこから結末は変わったんですね。いつ、なぜ変わったんですか？

ハルノ：どこかで変わったというよりは、何度か揺れて、どっちとくっつけるかまだ決まっていない時期もありました。理由はやっぱり読者さんの反応ですね。「二人（新名とみち）が結ばれているところが見たい」という声が圧倒的に多くて。「じゃあそれを叶えようじゃないか！」と（笑）。

　あと私が観ていた不倫ドラマは、不倫している二人を応援していても必ず悲しい結末だったんですよ。「私は結ばれるお話が観たいのに！」と思っていたので、じゃあ「自分の作品でそれをやればいいじゃないか」と、新名さんと結ばれる結末に決めたのですが、陽ちゃんがなかなか別れてくれなくて……（笑）。

編集：（笑）。あの頃ずっと言っていましたよね、「別れてくれないんだよね」って。

ハルノ：結局1話分では別れてくれなくて、数話使った記憶があります。でも実際、離婚と言われて「はいそうですか」とすぐに別れられる人はあまりいないですよね。

――2023年にはドラマも放送され、先に結末を迎えました。その時はもう漫画の結末は決まっていたんですか？

ハルノ：そうです。その時はもうこちらの結末は決まっていたので、「一緒の結末にはしない」という方向でドラマ制作の方とお話ししました。ドラマ自体すごく好評でしたし、役者さんたちの演技も素晴らしくて、楽しく観させていただきました。脚本家の方が描いてくださったセリフが、私が考えたセリフより良くなっていたときには「あーー！　こうきたか！」みたいな（笑）。脚本家の方ってすごいなと改めて思いましたね。