怪異といじめられっ子。独りぼっち同士だからこそ仲良くなれるはず? “怪異たらし”の少年と怪異たちのちょい怖ハートフルストーリー【書評】

マンガ

公開日:2025/4/16

 もしかしたら、今も私たちのそばにいるかもしれない「人ならざるもの」。幽霊や妖怪、怪異と呼ばれるそれらは、生きている人間に害を為したり、危険を及ぼすとされることが多い。

 でもそれはもしかしたら、お互いをちゃんと知らないからそうなっているだけなのかも。相手のことをもっと知ったら、きっと仲良くなれるはず。そんな思いで人と怪異の橋渡しを行う少年と、彼を取り巻く怪異たちとの“ちょい怖ほのぼのストーリー”が『怪異さんと俺』(ふに・無9/KADOKAWA)だ。

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 本作の主人公は、人ならざるものが見えてしまう小学生の男の子。怪異にも気軽に話しかけてしまい、周囲からは「独りでずっとぶつぶつ喋ってる」と気味悪がられる彼。そのため人間の友達がおらず、いわゆる“いじめられっ子”として孤独に日々を過ごしていた。

 そんな様子を見た学校の用務員さんから、彼はある日「旧校舎に行くといい」とアドバイスされる。その言葉に従い今は廃屋となった旧校舎に行くと、そこには怪異である市松人形の少女が。対話を経て彼女と友達になり、その後もいろんな怪異と縁が出来ていく少年。彼をとりまく怪異や人間たちのエピソードを、本作はオムニバス形式で描いていく。

 作品の見どころのひとつは、人たらしならぬ“怪異たらし”な少年のふるまいだろう。時には怪異に襲われそうになることもある。だがそれでも、自身が独りぼっちの寂しさを知るからこそ、彼は“独りぼっちの怪異たちに寄り添うこと”を諦めない。

 そんな少年の純粋な優しさに、怪異たちは面喰らったり絆されたり、時には毒気を抜かれたり。気づけば普通の友達として、彼のそばにいるようになる。

 人も怪異も関係ない。見た目や噂に騙されず、正しく相手に向き合って対話する。そんな素直な少年と、ちょっぴり怖い怪異たちの優しさあふれるハートフルな本作。その物語に、あなたもついついほっこりすること間違いなしだ。

文=ネゴト / 曽我美なつめ

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