25歳、身長133cm。 幼い容姿ゆえの生きづらさを抱えた女性は「見た目に縛られた社会」でどう生きるのか【書評】
公開日:2025/4/20

他人が当たり前に持っているものを生まれつき得られなかった人間にとって、人生は常に戦いの連続だ。周囲の人々のように物事がスムーズに進むことは少なく、日常はいつだって、途方もない数の悩みと苦難に埋め尽くされている。『133cmの景色』(ひるのつき子/新潮社)は、まさしくそんな一例をリアリティ豊かに描いた物語である。
主人公・吉乃華は、食品会社に勤務する25歳。小学生の頃、病気の影響で身体の成長が止まった華は、当時の身長のまま大人になった。当初は自身の症状を気にせず朗らかに過ごしていた華だったが、成長とともに周囲からは“同世代”扱いをされなくなり、年齢と外見の乖離にひそかに苦しむようになる。
社会人になった現在も、彼女が直面する現実の厳しさは変わらない。他社に赴けば、先方には小学生の校外学習か何かなのかと誤解されるはめに。気合いを入れて参加した合コンは敗戦続き。仕事の打ち合わせでは、飲酒絡みの案件となると、担当責任者であるにもかかわらずまったく相手にされなくなる。
本作の見どころは、慢性的な生きづらさを抱えながらも自らの内面を大切にし、どんな困難にも屈しない覚悟を持った主人公の潔さだ。
日常的に好奇の目にさらされようと、偏見による不当な評価を下されようと、華の凛とした眼差しが曇ることはない。なぜなら、彼女の内には、他者の価値観によって揺らぐことのない強い信念が息づいているからだ。「私だって幸せになれるんだって証明してやる」。彼女が時間をかけて築き上げた誇りと覚悟のたしかな輝きが、読み手の心に強く迫る。
また、そんな主人公とひょんなことから親しくなった新入社員・岩見のキャラクターも本作の魅力のひとつ。彼が人知れず抱える事情とは、はたして――?
「なんとなく生きづらい」「周りと違う気がする」——そんな思いを抱える人はきっと、華や岩見の心情に共感できるだろう。迷いや悩みを抱えたときや、自分の生き方を見つめ直したいときにぜひ手に取ってほしい作品だ。