1度は見逃した夫の浮気。だが2度目の浮気に不動産投資詐欺、挙句の果てには子どもの誘拐未遂… 次々降りかかるド級の災難、妻が最後に選んだ道とは?【書評】
公開日:2025/4/24

いつの時代も、不倫や浮気をテーマにしたマンガや映画、ドラマは人気だ。ドロドロとした人間関係に巻き込まれるのは御免だが、マンガや映画、ドラマであれば、ついつい気になってハマってしまう…という人も多いはず。
とはいえ一口に不倫・浮気といっても、恋愛トラブルが辿る末路は夫婦・カップルによって実にさまざま。『私以外、全員クズ 夫の浮気はハニトラ地獄でした』(神谷志保:原作、下地のりこ:漫画/KADOKAWA)はそのタイトルどおり、ただの浮気ではすまない、まさに究極の泥沼劇を描いた“人間の怖さ”も垣間見える作品だ。
物語の中心人物は、幼い娘・リンを育てる志保。過去に浮気をした夫・タカシとの夫婦関係の再構築を経て平和な生活を送っていたはずが、近頃再び夫に不審な動きが。
挙動を怪しんで身辺を調べると、彼が再度浮気に走っていたことに加え、なんとその結果夫婦は揃って不動産投資詐欺に巻き込まれてしまう。その中で再度ちらつき始める、夫の過去の浮気相手の影。複数の泥沼劇が次々襲い掛かる中、はたして志保はどのようにそれらを切り抜けるのか…といったあらすじになる。
本作の読みどころのひとつが、すべての元凶ともなる志保の夫・タカシの究極のダメ男っぷりだ。妻の信頼を裏切り2度も浮気に走るのみならず、自身の危機管理の甘さで数百万円もの負債を抱えそうになったり、大事な家族を危険に晒しそうになったり。
第三者が傍から見ていても、思わず頭が痛くなるほどのダメっぷり。うっかりこんな男と結婚してしまった志保の心労は、途方もないものだっただろうと容易に想像がつく。自分でまいた種だと、彼ひとりが不幸になるならまだマシである。いわば完全に火の粉を被る形になった妻と子どもには、今後幸せになってほしいと願うばかりだ。
そんな不甲斐ない男の存在に加え、サイコパスとも呼べる常軌を逸した価値観の女の存在が、この泥沼劇をより混沌とさせる。悪気がないどころか、どんな状況に陥っても自分自身が正義と信じて疑わない。その暴走っぷりには、どんなホラーマンガよりも恐ろしい「人間の怖さ」を垣間見ることができる。
読み進めるにつれ単なる不倫・浮気モノに収まらず、もはやサスペンス作品の様相を呈してくる本作。数多の不幸が折り重なった結果、夫婦がそれぞれ歩む結末とは。物語は最後まで、目を離せない展開が続いていく。