二宮和也「令和の赤ちゃんたちは良い環境で育っているんだな」。約20年ぶりに声の出演を務めて感じたこと【『シナぷしゅ THE MOVIE』インタビュー前編】

文芸・カルチャー

公開日:2025/5/14

 映画『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』の、特別出演キャストである二宮和也さんにお話を伺った。

 本作は、テレ東系で放送中の乳幼児向け番組『シナぷしゅ』(毎週月~金曜あさ7時30分)の劇場版第2弾。前作に続き、玉木宏さんが「にゅう」役を担当し、新キャラクター「ぱるてぃ」の声を二宮和也さんが演じる。

「ぱるてぃ」は言葉を話さず、ほとんど「ぱるぱる」というワードのみで感情を表現するユニークなキャラクターだ。取材会では、そんな「ぱるてぃ」の役作りや収録時のエピソードのほか、赤ちゃん向け作品だからこそ感じた難しさについても語られた。

 二宮さんはこれまでアイドル、俳優、バラエティなど幅広いフィールドで活躍してきたが、本作では“赤ちゃん向け映画”という新たなジャンルに挑戦することに。統括プロデューサーの飯田佳奈子さんも「二宮さんならば、赤ちゃん向け作品に新たな魅力を加えてくださるのでは」とオファーの経緯を明かした。

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 本記事では、取材会の模様とインタビューの内容を前後編にわたってお届けする。前編となる本記事では、取材会での質疑応答の様子をお届けする。劇場作品の声の出演としては約20年ぶりの挑戦となる二宮さんが、赤ちゃん向けの作品に携わる上で意識したことや、収録現場で感じたこととは? また、玉木宏さんとの共演経験を踏まえた“役のバランス”の取り方や、作品を通して伝えたい思いについても詳しく聞いた。

赤ちゃん向けの映画に挑戦。二宮和也が意識したこと

 取材会場はテレビ東京の一室。まずは集まった取材陣に、二宮さんから挨拶が。

二宮和也さん(以下、二宮):この作品は、本当に楽しく制作させていただきました。すでにご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、小さな子どもから、子育てを頑張っているお父さんお母さんまで、多くの方に向けた作品です。そんな作品に参加できたことを、とても嬉しく思っています。

最初にお話をいただいたときは驚きましたが、玉木宏くんとはこれまで何度も共演させていただいており、また一緒にこうした作品を作れることが非常に面白く、ぜひ挑戦したいと思いました。そして、それが実現したことを嬉しく思っています。

『鉄コン筋クリート』以来の劇場作品への声の出演

 続いて質疑応答へ。取材陣から本作のオファーを受けた際の率直な感想について聞かれ、次のように語った。

二宮:最初にお話をいただいたときは、驚きましたね。「なんだ、なんだ?」って感じでした(笑)。でも、玉木くんが前作で声を担当していたのは知っていましたし、彼も何かしら考えながらこの作品に携わっていたんだろうな、と思ったんです。

今回の作品は、お母さんやお父さん、子どもたちといった家族の中で、エンターテインメントとしてどんな形で成立するのかが気になりました。特に、自分があまり言葉を発さずに展開していく中で、どうやって感動や喜び、ワクワク感を伝えられるのかというのは、一つの挑戦だなと思いました。だから、断る理由は特になかったですね。

また、この映画が世の中の家族にとっての一助になればいいなと思いました。もちろん、映画以外にも家族の楽しみ方はいろいろあると思います。でも、自分がすぐに参加できて、即戦力になれる形を考えたときに、映画というエンターテインメントが一番しっくりきたんです。
それに、この映画は特殊なので、「どんなふうに制作されているんだろう?」とワクワクしながら取り組みましたね。

 実は、劇場作品への声の出演は『鉄コン筋クリート』以来、約20年ぶりという二宮さん。収録現場で感じた違いや、赤ちゃん向けの作品ならではの収録の工夫はあったのだろうか。

二宮:収録の手法自体は、そこまで大きく変わってはいないと思います。ただ、20年前ですか……僕も記憶があやふやなんですけど(笑)。

昔は、まだ絵コンテの段階で収録することが多かったんです。でも、今回は完全に出来上がった映像に声を当てられたので、キャラクターの色味だったり、他の音だったり、動きだったり……。それらを共有しながら演じることができて、すごくありがたかったですね。

「また二人でやるんだ!」思わず笑った玉木宏との6度目の共演

 二宮さんと玉木さんは、今作で6回目の共演となる。出演が決まった時、「また二人でやるんだ!」と笑ってしまったという二宮さん。収録は別々だったそうだが、現場では「また会ったね」と話したと言う。

二宮:実は、共演回数で言えば、僕の中では玉木くんが一番多い俳優さんになっていて(笑)。でもいつも回数を間違えちゃう。「4回だよね?」「いや、5回だよ!」「あれ? 俺、1回抜けてる?」みたいなやりとりをしてます(笑)。

玉木くんって、見た目はクールで男らしいイメージがあるじゃないですか。でも、実際にはこういう作品にも出演されていて、すごく幅広いお仕事をされている。

玉木くんは現場にいるだけで安心感がある人なので、何があっても大丈夫だろうなという気持ちもありましたね。理由とか確証はないんですけど、そう思わせてくれる存在なんです。
受け止める器が広い人なので、僕も安心して演じることができましたし、すごくプラスになったなと思います。

玉木宏との対比も意識? 「ぱるてぃ」の声が生まれるまで

 

 二宮さんが演じた「ぱるてぃ」は陽気なタクシードライバー。音楽やパーティーが大好きで、いつもヘッドフォンをして気分をアゲているキャラだ。役作りで意識したことについては、このように語った。

二宮:収録前は、「ぱるてぃ」のキャラクターや物語での立ち位置について、大まかな方向性は考えていました。ただ、実際の収録では監督と話し合いながら進めていきました。

現場はすごく楽しくて、「これすごい!」というリアクションをもらいながら、「じゃあ、こんな感じで試してみます」という具合に、どんどん進んでいきました。
キャラクターが現場で自然と放出されていく感じというか(笑)。「あ、このぱるてぃが出てきた!」みたいな、すごく自然な形で収録できて、演じていて楽しかったですね。

 「ぱるてぃ」の声は、普段の二宮さんのイメージからすると高いトーンとなっている。そこに至った理由はなんなのか。

二宮:玉木くんの声ってすごく低いじゃないですか。だから、玉木くん演じる「にゅう」の対比として、僕は高めの声でもいいんじゃないかと考えていました。

また、「にゅう」以外のキャラクターとの関係性も考えると、やっぱり物語の真ん中にいるのは「ぷしゅぷしゅ」なんですよね。「ぷしゅぷしゅ」の冒険や活躍を際立たせるためにも、周りのキャラクターのバランスが大事だと感じました。そういった点を踏まえながら演じていましたね。

  難しかった点や意識した点については、以下のように語った。

二宮:最初はイメージを立体的にするのが難しかったですね。でも、映像を見ながら演じることで、「このタイミングならこういう表現ができるな」というのが見えてきて助かりました。

気をつけたのはスピード感です。物語の展開ももちろん大事ですが、子どもたちがメインで観る作品なので、言葉の間やテンポを意識して、伝わりやすいよう工夫しました。「こう言ったら分かるよね?」と押し付けるのではなく、自然に伝わるようにすることも心がけました。

僕自身、普段からせっかちなところがあるので、早口になりがちなんです。そこをなるべくわざとらしくならないよう抑える、というルールで演じました。

 また、通常の実写作品とは異なるアプローチを取ったことについて、こう続けた。

二宮:普段は台本に書かれていることも、一度は疑ってみるタイプなんです。「これで本当に大丈夫なのか?」と現場で話し合って、考えながら演じることが多いんですけど、今回はそういうアプローチではなくて。

今ある表現を多面的にしようとするのではなく、「1は1」として、わかりやすく伝えることを重視しました。子どもたちに向けた作品として、それが一番適しているという判断でしたね。

実写のドラマや映画では、ちょっとした工夫を加えたり、意外性を狙うこともあります。でも、今回はそういったことをせず、あくまでストレートな表現を意識しました。

この年齢になってくると、逆に「堂々とシンプルに表現する」というのは怖い部分もあります。でも、今回の役を通して、それをしっかりとやる機会をもらえたのは、とてもありがたかったですね。

 今回出演するにあたり、ちょっとした不安もあったと言う。

二宮:僕自身、『シナぷしゅ』のファミリーの一員になったような感覚もありました。長年続いている作品に新しく加わるというのは、ちょっとした不安もありましたね。

皆さんずっとやられている方々ばかりなので、「そこに自分が入るのか」と思うとドキドキしました。でも、それは「ぱるてぃ」の立場とも重なる部分があったのかなとも思います。だから、すごく新鮮な気持ちで、ピュアに、ドキドキしながら演じていました。

それに、「ぱるてぃ」はずっと「ぱるぱる」って言っているんですよ(笑)。人間には「ぱるぱる」としか聞こえない中で、どうやって感情をのせるかは難しくもあり、面白い部分でしたね。

 ちなみに二宮さんが「ぱるてぃ」のキャラクターデザインで特に気に入っているのは、ヘッドホンとクリアなグリーンのタグだそう。

二宮:すごく凝っていて、キャラクターの個性がディテールに表れているなと思いました。制作デザイナーさんたちの愛情をすごく感じましたね。

映画ならではの特別感。ラストシーンに詰まった“お祭り感”

 映画第2弾となる今回のタイトルは「シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY」。そのお祭り感がよりギュッと詰まっているのはラストシーンだそう。

二宮:僕はラストのシーンがすごく好きですね。お祭り感があって、映画ならではの特別な雰囲気があるというか。

テレビのレギュラー放送とは違って、映画だと「オールスターが一堂に会する」という展開があるじゃないですか。それが醍醐味ですし、ワクワクするなと思いました。

僕のような新しいキャラクターが物語に加わるのも面白いですよね。「パーティー」というテーマにも合っていますし、第2弾の見どころの一つになるんじゃないかなと思います。

それに、この映画は約40分と短い尺ですが、ゆったりと楽しめる作品になっています。テレビ放送よりは少し長い時間なので、子どもたちが挑戦する機会としてもちょうどいいのかなと。

本当に、優しい人たちが作っている作品だなと思いましたね。観ていて、僕自身もすごく優しい気持ちになりました。

 また、MINMIさんが歌う主題歌「VIBEしゅ」からは、愛情に関するメッセージを受け取ったそうだ。

二宮:この作品には「無償の愛情で集まる強さ」みたいなものを感じました。それが、楽曲にも表れていると思います。パーソナルな部分にも響くような曲になっているので、聴けば聴くほど感動しましたね。

0歳からの映画館デビューにぴったり。親子で安心して楽しめる作品

 『シナぷしゅ THE MOVIE』は「0歳から楽しめる映画」という新たな挑戦を掲げ、「真っ暗じゃない照明。やさしい音量。泣いても大丈夫。」なあたたかい雰囲気で、赤ちゃんの“にゅうシネマたいけん”(映画館デビュー)にピッタリの作品でもある。

 親子で観る映画としての魅力について、このように語った。

二宮:これまで僕が出演させていただいた作品って、親子で観るといっても、親が50〜70代で子どもは10〜30代といった年齢層の親子を想定したものが多かったんです。

でも、今回はもっと若い世代の親、そして0歳からの子どもたちが一緒に観る作品で、そういう意味でとても貴重な体験になりました。

僕ら嵐のコンサートでは、当時「親子席」を一番多く設けていたグループのひとつだったと思います。そこでは、「座って観ていいですよ」とか、「子どもが泣いたら途中で出ても大丈夫ですよ」とか、親子向けのルールを作っていました。そういう意味では、「親子に向けたエンタメ」に対する意識は持っていたつもりでした。

でも、それはあくまで自分たちの環境の中でのルールだったんですよね。今回、映画という形で親子向けエンタメに触れて、「こういう映画は他にないんじゃないか?」と感じました。

親子のあり方について、改めて考えさせられたというか、「令和の赤ちゃんたちは、良い環境で育っているんだな」と思いました。

取材=金沢俊吾、篠原舞(ネゴト)、撮影=コウユウシエン

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