夫が女性向け風俗店で働いている? 真相を知りたい妻は、夫を指名し予約。『今日、私は夫と浮気する』【書評】

マンガ

公開日:2025/5/6

 夫婦仲とは、年々変化していくものである。毎日が新鮮な喜びに満ちていた付き合いたての頃と違い、生活をともにする中で小さな不満や疑念が積み重なり、心の距離が生まれるケースも少なくない。

今日、私は夫と浮気する』(春乃未果:原作、ELZ:漫画/KADOKAWA)では、そんな夫婦関係の変化の中で生まれる葛藤や苦悩がリアリティ豊かに描かれている。

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 主人公・亜希は、夫と娘と3人で暮らす専業主婦。IT企業に勤める夫・司は、高身長イケメンで仕事熱心、さらに育児にも協力的な理想の男性だ。しかし、亜希にはひとつだけ満たされない思いがあった。それは、夫婦の間に生じたセックスレスの悩みである。

 激務を理由に夫婦の時間を拒む夫のつれない態度に、亜希の心には日に日に虚しさが広がっていく。そんなある日、仕事に行ったはずの夫を街中で見かけて後を追った亜希は、彼が見知らぬ女性とシティホテルへ入っていく姿を目撃。ショックを受けながらも、夫の秘密を知るべく彼の部屋を探っていた亜希は、クローゼットの中から一枚の名刺を発見する。そこにはなんと、女性向け風俗店の名前が書かれていて――!?

 本作の見どころは、夫婦関係に特有の複雑さやもどかしさが、女性側の視点からきわめて繊細に描き出されている点だ。

 一般的に、パートナーに対して秘密を持つのは裏切りであると考える人は多いだろう。しかし、良好な関係を長期的に保つためには、すべてをさらけ出すことが正解とは限らない。むしろ、場合によっては知らないままのほうが幸せなこともあるかもしれない。

 たとえ愛情があっても、相手を本当の意味で理解することは決して容易ではない。すれ違い、迷い、傷つけ合いながら、それでも関係を続ける意味とは何なのか。本作は、夫の真実を確かめるために果敢に行動する主人公・亜希の姿を通して、読み手にその正解のない問いを投げかけている。夫婦の在り方に悩む人にはぜひ手に取ってほしい1冊だ。

文=ネゴト / 糸野旬

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