はじまりは夫の不倫を告発するメールだった。慰謝料を勝ち取るために奮闘する令嬢サレ妻の復讐劇『慰謝料1億円をクズ旦那に払わせる作戦』【書評】
公開日:2025/4/28

パートナーに裏切られた場合、どのような選択をするにしろ、感情的になって相手を責め立てるのは得策ではない。とくに離婚や慰謝料の請求を視野に入れている場合は、客観的な証拠を押さえるために冷静な判断力を失わないことが何より大切なのだ。
そんな一例をリアルに描いた『慰謝料1億円をクズ旦那に払わせる作戦』(薄荷通:漫画、サレ妻美奈子:原作/KADOKAWA)は、自身を裏切った夫に法的な報いを受けさせるため奮闘する女性が紡ぐ復讐劇である。
主人公・美奈子は、夫とふたりの子どもとともに暮らす主婦。大手建設会社の社長令嬢として何不自由なく育った彼女は、父の会社で当時若手リーダー格だった男・一起と恋に落ち、結婚した。
平凡ながらも穏やかな日々に満足していた美奈子。だがある日、彼女のもとに〈あなたの夫、田中一起は新宿のBAR「紫蝶」のママ吉田亜希と不倫してます。〉という衝撃のメールが届く。不審に思った美奈子は、ひそかに夫の素行調査を始める。すると不倫の事実に加え、彼が怪しげなビジネスに手を出していることまで明らかになり――!?
本作の見どころは、裏切りと欺瞞に満ちた結婚生活に終止符を打つべく、夫の裏切りに全身全霊で立ち向かう主人公のひたむきさだ。
独立後、事業を軌道に乗せようと努める夫を一心に支え続け、家庭と仕事の両面で尽力してきた美奈子。互いに信頼し合っていると思っていた日々の裏側で、夫は別の女性と関係を持っていた。
積み重ねてきた時間と努力を一瞬で反故にされた怒りと悲しみは、並大抵のものではないだろう。しかしそんな酷い現実に直面しても、彼女は真実から目を背けようとはしなかった。ひとりの女性としての誇りを胸に立ち上がり、自らの手で明るい未来を選び直すことを選んだのだ。
はたして美奈子は、正当な慰謝料を手に入れ、心の平穏を取り戻すことができるのか。心をすり減らしながらも決して希望を失わなかったサレ妻の孤独な闘いの行く末を、どうか見届けてほしい。