借金1000万円の貧乏作曲家が猫のために奮起!「人生が一変した」猫マスターの実話を漫画化【書評】
公開日:2025/5/14

我々の生活に癒しを与えてくれる、かわいいペットの存在。ペットを愛する人の中には、きっとペットとの出会いで自分の人生が変わったという人もいるはずだ
本書『借金1000万作曲家の人生を変えてくれた猫の話』(響介:原作、ちとせ:漫画/ワニブックス)の主人公であり、原作者でもある響介氏。彼もまた猫たちとの出会いによって、人生が180度いい方向へ変わった一人でもある。
猫を愛し、猫にそれとなく愛されやすい”猫マスター”を自称する響介氏。猫たちと出会った当時の響介氏は、1000万円の借金を背負った超貧乏な作曲家。それが今や、猫たちのための立派な一戸建てを建てられる売れっ子クリエイターへ変貌を遂げたのだ。すべては猫のために――
ダメ人間を絵に描いたような彼の人生が、猫たちのおかげでどう変わったのか。その紆余曲折を描いたエピソードをSNSのペット漫画で人気を博すちとせ氏によって漫画化した本作。「猫のため」という思いを原動力に激動の変化を遂げる響介氏の人生や、本人による偏愛ほとばしるエッセイパートまで。細部にわたって、5匹の猫たちへの愛がたっぷり詰まっている一作となる。
作中でも響介氏本人が言及している通り、確かに猫たちがいたからこそどん底から這い上がり今のような立派な生活を送れている。だが、なぜそこまで人生を変えることができたかといえば、運の良さや作曲の才能と同等かそれ以上に、彼自身に「猫たちのために頑張れる才能があったから」なのだろう。
同時にさまざまな経験を経て、今も猫たちを溺愛するからこそ、「昔のような状況で猫を飼い始めたことは、自分の人生最大の転換点であり間違いでもあった」という彼の言葉は、非常に説得力があり重みがある。猫はかわいい。しかしだからこそ、「かわいい」の気持ちだけで猫を飼ってはいけない、と。
本作の響介氏のように、ペットのみならず何かを愛する強い気持ちには、時に人生を大きく突き動かすようなパワーがある。ペットのみならず推しや家族、子ども…。今まさに何かを、あるいは誰かを愛し、大きな情熱を注ぐ人にとって、本コミックは共感なくして読めない一冊となっているだろう。