『夫の元不倫相手とルームシェアしています』（兎月メイ：漫画、風沢氷花：原作/KADOKAWA）は、主人公の女性がひょんなことから夫の不倫相手と巡り合い心を通わせる過程をリアリティ豊かに描き出す、異色の不倫漫画だ。

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　主人公・有里は、結婚して5年の主婦。週に2回のパートの仕事と妊活に勤しむ日々だ。しかし現状、夫との仲はあまりうまくいっていなかった。結婚当初は優しくてマメだった彼は、年を経るごとに有里を見下すようになり、日常的に横柄な態度を取るようになっていたのだ。有里に隠れて他の女性と関係を持ったことも一度や二度ではなかった。

　ある夜、これまでの我慢が限界に達した有里はついに家を出る決意をする。行き先は友人が住むシェアハウス。だが、そこには予想外の人物がいて――!?

　本作の見どころは、主人公・有里と夫の元不倫相手・マイカ、そして有里の友人・華奈という不思議な関係性の女性3人組が育む絆と友情、そしてそれぞれの心情の変化だ。
　
　一般的に、シェアハウスという限られた空間における人間関係は、他の生活形態におけるそれと比べて非常に独特なもの。個々のプライバシーが制限される一方で、住人同士の距離感が否応なく密接になるため、強いストレスを覚える人も少なくない。ましてや、住人のひとりが夫の不貞の相手であるなど、考えるだけで恐ろしい。

　しかし、ひとつ屋根の下で暮らす日々は、彼女たち一人ひとりに思いがけずプラスの影響を与える。人は異文化との出会いや他者との対話を通じてより柔軟に、より豊かに生きていけるようになるものだ。性格も生い立ちも異なる3人が、ともに過ごす時間の中で互いに影響を与え合い少しずつ変化していく過程が、読み手の胸にやさしく迫る。

　はたして有里は、自分の幸せの形を見つけることができるのか。夫の裏切りをきっかけに自身の人生を見つめ直したひとりの女性の心の変化、そして不思議な絆を持つ3人の共同生活の行く末を、どうか見届けてほしい。

文＝ネゴト / 糸野旬