SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第46回「タクシー運」
公開日:2025/4/27
運も実力のうち、なんて言葉をよく耳にする。不透明かつあやふやな未来をどうサバイブするかが人生なのだとしたら、数多ある取捨選択を繰り返す人生において、運は確かに必要なのかもしれないと思う。
自分は果たして、と考えてみると、私は運が有って運が無い人間だなアとつくづく思う。そんなこと言ったら皆誰しもがそうだろうってことにはなるのだが、私の場合ぼやっとそんなふうに思うわけではなく、セクションごとの運の有無がかなりはっきりしているからはっきりと思うのだ。
おかげさまで、大きく括って現時点での私の人生は、運の有る人生と思わせて頂いている。延いては人に恵まれているということに他ならないので、人にまつわる運があると言った方がいいのかもしれない。度々訪れる分岐点で個人で毎度最良の選択が出来てきたかというとかなり疑わしい。しかし、対人関係に多大なる運がある結果、分岐の先にある仕事、そして私生活において物凄く素敵な環境を与えてもらっている。実にありがたいことである。
だからこそそれ以外のセクションの運の無さが際立つというか、それに引き換え他の部分はどうなのだろうと鑑みた時に、実についてないことが多く目につく。よって、運が有って運が無いという結論に至るわけだ。
まア具体的には博才というか、勝負事にまつわる運。マジで全部弱い。様々なギャンブル、ジャンケンすら弱い。そして購買運。購入後にイメージと違うことが発覚したり、商品の不具合なんかはしょっちゅう。あとは接客運。なんかどこか妙な店員さんに応対されやすい。もちろん素晴らしいものを購入出来たり、素敵な接客をしてもらえることだってある。ただ割合で考えると、運が無いです、と胸を張って言えよう。
人それぞれに運の総量というものが存在していたとして。神様が各セクションの器に運を司る聖なる液体を丁寧に振り分けなければいけないところ、庭先の小鳥が可愛らしく遊ぶその様に気を取られ、その配分を大いにミスりまくって出来たのがきっと私の人生だ。あ、いけねっ、ってな具合にもう一度やり直そうとしたものの、さえずる小鳥の歌うまま、庭先まで足を伸ばした神様がミスしたことなどすっかり忘れて合わせて歌ってしまった結果、歪なままになってしまった私の人生。まア全振りの先が対人関係だったことが、大いなる幸いになったのでまア良しとしてもいいのだが。それにしても、と思うことが多すぎる。
中でも頭抜けて運が無いと感じるものがタクシー運。
道を間違えられないことの方が稀ってくらいなのだからこれは本当にすごい。普段電車移動の私でも、仕事の現場ではタクシーを使わせて頂くことが多いので、マネージャーはそれを一番近くで目の当たりにしている。乗り込んですぐ割と丁寧に行き先をお伝えして、おまけにナビまで入れてもらってるのに、何故に? ってことばかりで、他にも配車したタクシーの乗車位置が全然違ったり、急ブレーキを踏まれて前の座席におでこを嫌というほど打ちつけたりなど。以前エッセイにも下北沢の存在を知らない運転手さんに当たった時の話を書かせて頂いたように、話題には事欠かない。
これを記している前日の昼は手配したタクシーに別の人が乗り込んで出発してしまったし、夜は夜で遣る瀬無い事態に陥った。
しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。2025年4月に結成20周年を迎え、SUPER BEAVER 自主企画「現場至上主義 2025」を4月5日、6日にさいたまスーパーアリーナで行い、さらに、6月20日、21日に自身最大規模となるZOZOマリンスタジアムにてライブを行うことが決定。
自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中