漢字嫌いの小学生を夢中にさせる「お家探訪マンガ」とは?母が見た“没入の瞬間”【インタビュー】

マンガ

公開日:2025/4/29

 子どもが読書に夢中になっている姿には、心を動かされるものがあります。

「漢字嫌いの娘が黙々と読んでいました」

 そう話すのは、小学3年生の娘さんを育てるぽるとさん(@3710port3030)。娘さんが夢中になったのは、漫画『お家、見せてもらっていいですか?』『もっとお家、見せてもらっていいですか?』(佐久間薫/KADOKAWA)です。

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 建築や町歩きをテーマにしたこの漫画が、小学生の心を深くとらえた理由とは?

作品との出会いはSNS。しかし「反応は微妙」

【漫画】本編を読む

 もともと建築物に強い興味があったという娘さん。本作を手にしたきっかけは、ぽるとさんがX(旧Twitter)で偶然見かけた作品紹介の投稿でした。

「建物を観察するのが好きな子だし、主人公の道生くんも娘と同じ小学3年生。もしかしたら合うかもしれないなと思って、試しに読ませてみたんです」

 ところが最初は、あまり食いつきがよくなかったのだとか。

「主人公が男の子だったからか、反応は微妙で…」とぽるとさんは振り返ります。それでも「とりあえず1話だけ読んでみて」と声をかけたところ、物語にどんどん引き込まれていったそうです。

日常に溶け込み始めた『お家、見せてもらっていいですか?』

 建築好きな娘さんが惹かれたのは、登場する家々や町の風景。さらに、作中に登場する食べ物の描写にも心を掴まれたようです。

 もともと食べることが大好きだった娘さんは、漫画に登場するスイーツ「アップルパイのアイスクリームのせ」や「チョコDEパイ」に夢中に。

 作中のスイーツを作ってみたり、スーパーで同じお菓子を見つけて喜んだりと、物語の世界を日常でも楽しんだそう。

 また、登場人物の大人たちが主人公の道生くんを“子ども扱いしない”姿勢にも、娘さんは強く共感を覚えたようです。「いつも“子ども扱いしない大人が好き”と言っているので、そこも大きかったと思います」。

大好きな建物巡りの解像度もアップ!

 本作を読み進めていく中で、娘さんの建物への観察眼にも変化が。もともと好きだった建物見学ですが、そのときに見るポイントがより詳細になったといいます。

 作中で紹介されていた“ふたり暮らしのツタの家”がお気に入りになり、似た家を散歩中に探したこともそのひとつ。

 娘さんの建築熱の高まりを察したぽるとさんは、東京都渋谷区にある日本最大のモスク「東京ジャーミイ」にも足を運びます。その美しさには娘さんも大興奮! 次はどこに行こうかと、計画を立てるのも楽しみだとか。

 さらに娘さんは、親戚の集まりの場に本作を持参し「とりあえず1話だけ読んでみて」と“布教活動”を始めるまでに成長。「私が娘にすすめた時と同じセリフだったので、思わず笑ってしまいました」と、ぽるとさんも感慨深げな様子でした。

“好き”の力で子どもの世界が広がっていく

『お家、見せてもらっていいですか?』にはフリガナがありません。ぽるとさんは「漢字嫌いの娘は読むのが難しいかも」と心配していたそうです。ところが娘さんは、意味を自分で調べながら読み進めていたといいます。

「“好き”の力ってすごいですね。黙々と辞書を片手に読み続ける姿に、私もびっくりしました」

 SNSでこれらのエピソードを投稿したところ、なんと作者の佐久間薫さんからもメッセージが届いたそうです。これには娘さんも大喜び!

本が人生を彩る瞬間を見せてくれた

「道生くんが大人とたくさん話す中で成長していくように、娘も作品から何かを受け取っている気がします。漫画をきっかけに、自分の“好き”をもっと広げていってほしいです」と、ぽるとさんは語ります。

 建物、そこに住まう人の暮らし、そして人とのつながり……。そのどれもを温かく描き、読者の心を豊かに揺さぶる『お家、見せてもらっていいですか?』『もっとお家、見せてもらっていいですか?』。

 小学3年生の女の子の“没入体験”は、本との出会いが人生を彩る瞬間を私たちに見せてくれました。

取材・文=あまみん

【漫画】本編を読む

『お家、見せてもらっていいですか?』『もっとお家、見せてもらっていいですか?』

(佐久間薫/KADOKAWA)
(佐久間薫/KADOKAWA)

 建築×人生×自由研究=家に恋する少年の冒険記(丁寧な解説付き)!

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