「かわいいだけじゃやってられない!」くたくたな母の叫びがこだまする、ドタバタ2人育児エッセイ【書評】
公開日:2025/5/2

『正直 余裕はありません。 いっぱいいっぱいだけど2人育児楽しんでます』(あね子/KADOKAWA)は、2児の母である著者が、日々奮闘する育児のリアルを描いたコミックエッセイだ。
子育ては「かわいい」だけでは語れない。体力、経済力、精神力――あらゆる力が試される。とくに2人目の育児ともなれば、経験がある分少しは慣れていても負担はむしろ倍増することもある。
妊娠・出産にいたるまでの社会的プレッシャーや、育児をめぐる夫婦間の温度差。2人目が生まれたことによって崩れゆく生活のバランスなどが、本作ではユーモラスかつ赤裸々に描かれている。
親戚が集まるたびに浴びせられる「2人目はまだ?」というお決まりの言葉にうんざりしたり、「もともと子どもが大好きなタイプではない」と語ったり。著者が「子どもはかわいいけど大変な気持ちのほうがデカいなぁ…」なんて本音を漏らす姿には、思わずうなずいてしまう人もいるだろう。
「子ども1人でも手いっぱい」そんなリアルな気持ちが、あけすけに綴られているのだ。
タイトルにもなった「正直、余裕はありません」の言葉。「大変」と声に出すことをためらいがちな育児のなかで、本作は「そう感じてもいいんだよ」とそっと許してくれるような安心感に満ちている。
育児に正解の形はない。そして、誰かと比べるものでもない。本作には、そんな当たり前だけれど忘れがちなメッセージが詰まっている。誰かのキラキラした育児日記ではなく、「現実」のなかで葛藤しながら、それでも我が子への愛情を見失わずに進んでいく日々。そのすべてが、今を生きる親たちの共感を呼ぶはずだ。
子育て中の人はもちろん、これから親になる人にも、子育てのしんどさと尊さをあらためて感じさせてくれる1冊である。