「浮気相手がうちに出入りしてる…?」夫の浮気相手は私の親友だった。彼女が夫を奪った本当の目的は――【書評】
公開日:2025/5/4

他人の恋人を奪うことに快楽を覚える人間は一定数いるものだ。人間の心理には元々、他者を支配したり、所有したりすることに対する欲求が存在するという。そうした欲求が恋愛関係において発揮された場合、さまざまなトラブルが生じる可能性が高いだろう。
『アタシが勝ち確 10年執着してくる幼馴染』(んぎまむ:漫画、yu:原案/KADOKAWA)は、そんなトラブルをリアルに描いた物語だ。
主人公・ユイカは、結婚3年目の主婦。マイホーム購入を叶えるため、大好きだったメイクやファッションも我慢して節約生活を続ける日々だ。そんな彼女の目下の悩みは、結婚当初とはまるで別人のような夫の態度。昔は「お前みたいな美人と結婚できるなんて俺は幸せ者だ」などと言っていた彼は、いまや「ブスババァ」「結婚詐欺だ」といった酷い言葉を平気で口にするようになっていた。
そんなある日、ユイカは気分転換にと参加した同窓会で、学生時代の親友・マミと再会する。昔からあざといアピールで男性を惹きつけていたマミは、学生の頃にユイカの彼氏を横取りした過去があった。案の定、ユイカの夫にも近づいた彼女は瞬く間に一線を越えてしまう。マミの真の目的は、ユイカよりも優位に立ち、彼女をどん底に突き落とすこと。それに気づいたユイカは、あらゆる手段を使ってマミへ復讐することを決意するのだが――。
本作の見どころは、強い復讐心ひとつを胸に、決死の覚悟で闘いに挑む主人公の潔さにある。明確な悪意をもって向かってくるかつての親友に対し、恐れを抱きながらも逃げずに立ち向かおうとするユイカ。怒りと憎しみをバネに立ち上がり、どんな手を使っても自らの手で決着をつけようとする彼女の強い意志に勇気づけられる読者も多いだろう。
はたしてユイカは、一度失われた幸福を取り戻すことができるのだろうか。過去に縛られるのではなく、望んだ未来を選び取るために奮闘するひとりの女性の再生の物語の結末を、どうか見届けてほしい。
文=ネゴト / 糸野旬