『その領収書じゃ、バレますよ』営業の外回り中にラブホテル!? 経理部が暴く会社の闇【書評】
公開日:2025/5/5

組織の中では権力者に逆らうことは難しいものである。理不尽な上司に対し、部下という立場で面と向かって指摘できる人は少ないかもしれない。「なんでもありな上司をギャフンと言わせることができたら…!」と一度でも感じたことがある人に、本作『その領収書じゃ、バレますよ ゴミ社員の成敗も、経理の仕事です』(nev:漫画、なつ:原案/KADOKAWA)を強くおすすめしたい。
本作の主人公は県内大手の楽器店に中途採用で入社した岡野彩音。外見上は美しいピアノの音色が響き渡る、きらびやかなショールームを持つこの会社だが、その内情はセクハラ、パワハラが蔓延する典型的なブラック企業だった。新人いじめのターゲットにされた彩音は前時代的な店長からの理不尽な扱いや、店長と男と女の関係でもある先輩女子からの執拗な嫌がらせを日々受け続けることになる。そんな中で手を差し伸べてくれたのは、髪の毛ボサボサ、猫背でぼそぼそと話す怪しい風貌の経理部・柳瀬律と、大学時代のサークルの後輩で、この会社も紹介してくれた吉澤拓斗だった。
律が持つある特殊能力と、正義感溢れる吉澤の行動力に助けられ、彩音は次第に職場の不正と向き合うようになる。ダメ社員の理不尽な言動や謎の領収書、店の不正の疑惑を3人で力を合わせて暴いていくことになったのだった。
新人に仕事を押し付け、営業の外回り中にゆっくりランチを楽しみ、挙げ句の果てにはラブホテルに立ち寄るといった破茶滅茶な上司たちの行動。そんな理不尽な環境に苦しめられる彩音を応援せずにはいられない。どんな目に遭っても耐え、笑顔で接客をし、仕事も丁寧にこなす彩音の成長を、常に見守るのは律と吉澤だ。
この3人が嫌悪しかない上司たちに、どのような形で正義を示し、復讐を果たしていくのか、最後まで目が離せない。理不尽な現実に苦しむ全ての人に、スカッとする結末を味わってほしい。
文=ネゴト / くるみ