腹痛で診察したら小児がんでした!中学生でがんになった少女の闘病の記録【書評】

マンガ

公開日:2025/5/23

 日本人の三大死因のひとつともいわれる「がん」。その罹患者は我々が思っているよりずっと多く、今や二人に一人が罹る病でもある。家族の誰かが、いつかがんに罹る可能性がある――それほど身近な病気なのだ。

 中には15歳以下というまだ幼い時分から、がんという重い病気と戦う運命を背負う子たちもいる。『中学生でがんになりました 〜腹痛から始まった小児がんの記録』(つきママ/KADOKAWA)は、そんな小児がんのサバイバー(寛解者)となった、一人の少女の体験談を描く物語だ。

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 主人公・莉子は母子家庭ではあるもののどこにでもいるような普通の中学生の女の子。しかしある日、彼女は慢性的に抱えていた腹痛が悪化。かかりつけの病院に行くと診察ののち、そのまま隣町の大病院を紹介されることとなる。

 病院での検査の結果、莉子の腹痛の原因は即座に手術すべき症状だったことが発覚。さらに術後、切除した腫瘍は悪性で、小児がんと診断される。小児がん患者となった莉子。多感な思春期の時期とも重なり、複雑な胸中を抱えながらも彼女は小児がんを克服すべく闘病生活を始める。

 15歳未満、中学生以下で発症したがんは一律で「小児がん」として扱われ、その罹患率は日本でもおよそ1万人に一人の割合といわれる。近年医学の飛躍的な進歩により、小児がんの5年生存率は80%まで上昇。発見・発症はしても克服できる可能性の高いがんとして、徐々に認知も広まりつつある。

「治せるがん」にはなってきたが、もちろん治療の道のりは険しく、つらいことも多い。心も身体も成長過程のなかで、治療に臨むのは非常に過酷なものだろう。だが本作の主人公・莉子のように、大変な治療を経験したからこそありふれた日常のかけがえのなさに気づいたり、自分の命を救ってくれた医療現場の人々へ憧れを持ったりする子どもたちもいるかもしれない。

 本作は「小児がん」という病気への理解を進めると同時に、自分が毎日健康に、当たり前に過ごせていることへの感謝を、改めて感じさせる一冊ともなっている。

文=ネゴト/ 曽我美なつめ

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