「たいした意見でもないことをいい連ねる世の中」101歳・佐藤愛子の痛快な言葉にスッキリ! 孤独、老いに負けそうな時に元気をくれる日めくりカレンダー【書評】
PR 公開日:2025/5/11

数々の名著を世に送り出し、痛快かつ愛に溢れるエッセイでも多くの人を元気づけている作家の佐藤愛子さん。2016年のベストセラーエッセイ『九十歳。何がめでたい』(小学館)の映画化も記憶に新しい。そんな佐藤さんは今年、101歳。その波乱に満ちた人生の経験が生んだ言葉を日めくりカレンダーにまとめたのが、『日めくり 佐藤愛子の幸福とは何ぞや』(中央公論新社)だ。

このカレンダーは、佐藤愛子さんが、生きることや老いについての思い、そして今、不安を抱える幅広い世代の読者に向けて語ったインタビューや著作の言葉をまとめたもの。主に90歳を過ぎてからの佐藤さんの言葉を、日めくりカレンダーで1日にひとつずつ味わうことができる。佐藤さんは1923年生まれ。陸軍主計将校との結婚と別れ、再婚した夫との偽装離婚、そして背負った夫の莫大な借金、その顛末を綴った『戦いすんで日が暮れて』(講談社文庫)の直木賞受賞、さらには佐藤家の歴史を描いた大作『血脈(上・中・下)』(文春文庫)の執筆……と、波乱の人生を送ってきた佐藤さん。そんな経験に裏付けされた言葉はとても奥深いと同時に、「どうにかなる」というあっけらかんとした明るさと、自らの苦境すら笑いに変えるユーモアに満ちていて、読者の心に温かく響いてくる。

たとえばカレンダーには、多くの人が恐れる「老い」に対する言葉も収められている。歳を重ねて欲望が枯れていくことで、人は「らくになる」と佐藤さん。また、「なぜ長生きはめでたいか?」というテーマについては、「老後は欲望を少しずつ鎮めながら、心を穏やかにして、死を迎えるための時間にすればいい」という。老いるほど人は忘れることや許すことが多くなるため、長生きは幸せだと佐藤さんは語る。こうした佐藤さんの考えを知ると、歳をとることが悪くないどころかありがたいことだと思えて、救われる。

自らを不幸だと思う人や、生きるのが苦しい人の心に届く言葉も多い。「そのときはそのときに」という言葉は、人生のさまざまな危機を用心しすぎて萎縮するのではなく、起きたときに力をふるえばいいというメッセージだ。「不如意なことは力がでるチャンス」「全部失ってごらんなさい。どうってことありませんよ」というのも、トラブルすら面白がり、生きる糧に変えてきた佐藤さんならではの熱い言葉。苦難があってもなくても、幸せは自分次第。101歳の佐藤さんの弾けるような笑顔が、それを何よりも物語っている。

また、佐藤さんらしい痛快な言葉には、胸がスッキリする。攻撃的な発言が目立つ世間に対しては、「いちいちうるせえ」「たいした意見でもないことをいい連ねる世の中」とバッサリ。くよくよと悩む人に対する「そんなことは自分で考えろ、なんでも人に訊くな」という言葉はドキッとするが、「経験は人を鍛えて強くしてくれます」「『それがナンなんだ!』という気持ちが自然に湧くものですよ」とも伝える。そうした佐藤さんの言葉に、笑わされながら、元気をもらえる。
31日分の日めくりカレンダーのため、毎月繰り返し使える。カレンダーページは、かわいいイラストや笑顔の佐藤さんの写真入りのあたたかいデザインで、目にするだけで気持ちが明るくなる。リビングやデスクなど、暮らしの身近にお守りのように置いておきたいカレンダーだ。
文=川辺美希