「指輪…外してる。せめて家でははめててよ…」不倫をして平然と帰ってくる夫。裏切りの証拠を押さえるため闘うサレ妻の奮闘劇【書評】
公開日:2025/5/28

パートナーの浮気を確信したとき、その事実にどのように向き合うかは人それぞれだ。すぐに別れを選ぶ人もいれば、「自分にも問題があったのかもしれない」と自責の念に駆られる人もいるだろう。いずれにしても多くの場合、信頼関係の再構築は困難を極める。
『今日も浮つく、あなたは燃える サレ妻が不倫現場に凸る話』(東雲あんず:漫画、山元環:漫画原作/KADOKAWA)は、不倫をされた女性側の視点から描いた作品だ。ショートドラマアプリ「BUMP」にて配信された同名ドラマが大ヒットし、SNSで大反響を呼んだ。
主人公・朋子は、夫と娘と3人で暮らす主婦。平凡ながらも温かい家庭を築き、幸せな日々を送っていた。しかしある日、おしゃれには無頓着な夫が若い女性に人気の韓国スキンケアアイテムの名前をさらっと口にしたことをきっかけに、朋子は彼の動向に小さな違和感を抱く。ショックを受けながらも現実から目を背けない決意を固めた朋子は、自らの手で真実を明らかにしようと立ち上がるのだが――。
本作の見どころは、裏切られた側の心情や精神的な在り方の変化がきわめて繊細に掘り下げられている点だ。
夫の浮気を確信した後も、すぐに怒りを爆発させるのではなく、今後の生活や選択について静かに思いを巡らせていた朋子。しかし、気まぐれに肩をもんでくれた彼の手に結婚指輪がないことにふと気づいた瞬間、それまで抑えていた感情が一気に溢れ出る。「せめて家でははめててよ…」。
かろうじて口には出さず心の声にとどめたこのひと言に、妻としての怒りや悲しみがすべて凝縮されているといえるだろう。虚しさや失望感、喪失感が込められた悲痛な心の叫びが、読み手の胸に生々しく迫る。
夫の裏切りに深く傷つきながらも、自分自身の尊厳を守るため、そして愛する娘のために最後まで闘い抜く覚悟を決めた朋子。静かに燃え上がるサレ妻の怒りと覚悟の行く末を、どうか見届けてほしい。