少子化の先にある孤独と希望。『ランダムフラスコベイビーズ』で互いを信じ合う尊さを描きたかった【漫画家インタビュー】
公開日:2025/5/18

最新の書籍や人気の漫画作品の情報を発信する「ダ・ヴィンチWeb」。今SNSを中心に話題を集めているホットな漫画を、作者へのインタビューを交えて紹介する。
少子化が極端に進んだ未来社会を舞台に、個々人の存在意義や絆の意味を問い直すSF漫画『ランダムフラスコベイビーズ』をピックアップ。
人類の未来を担うために創られた人造の少年少女たちが葛藤しながら生きる姿をリアリティ豊かに描いた本作は、X(旧Twitter)や作品コミュニケーションサービス・pixivなどを中心に人気が高まっており、9万以上のいいねが集まる投稿も。
作者・コガッツオ(@kogattuo)さんにインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。
極端な少子化が進んだ未来、人類の存続をかけて実施された無作為選出による体外授精。その計画により生み出された子どもたちは「ランダムフラスコベイビーズ」と呼ばれ、社会から隔離された施設でひっそりと育てられていた。
教育者であるアナンダとシスターカオリのもとで、倫理学や哲学、宗教学といった人間社会の根本的な思想や価値観について学ぶ子どもたち。しかし、心の奥には常に問いが渦巻く。自分たちは本当に人間なのか? それとも、祝福されない化け物なのか──?
閉ざされた日々が終わりを告げたとき、彼らは初めて“世界”と出会う。これは、個々人の存在の意味を問う、静かで強烈なSF群像劇だ。
互いを信じ合うことの尊さを描きたかった
ーー『ランダムフラスコベイビーズ』を創作したきっかけや理由を教えてください。
就職後、思った以上に時間があり、「そういえば漫画を描くのが好きだったな」と思い出して描き始めたのがきっかけです。描いているうちにどんどん楽しくなり、空いた時間に少しずつ描いたものをpixivに投稿しているうちに、気がつけば140ページ以上にもなる長編作品になっていました。
ーー本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントはありますか?
最も描きたかったのは、バスから降りるクライマックスシーンです。残りの展開はすべて、そこから逆算して描いていたと思います。

ーー特に気に入っているシーンを教えてください。
気に入っているのは、やはり物語のクライマックスシーンです。それ以外では、前編のラストに登場するシスターカオリの横顔のカットが迫力が出せたと感じていて、特に印象に残っています。
ーー少子化が進んだ未来を舞台に人造の少年少女たちが生きるという、シリアスながらどこかリアリティのある設定に惹き込まれました。モデルとなった人物や参考にした作品などはありますか?
参考にした作品は、カズオ・イシグロさんによる長編小説『わたしを離さないで』ですね。それから、伊藤計劃さんによる長編SF小説『ハーモニー』からも少し影響を受けている気がします。
また、本作は絵が簡素(婉曲的表現)であることを逆手にとり、全編を通してあえて明示的な描写を避け、説明しすぎずに読者に想像してもらう形にしています。そのため、リアリティがあるように見えるのであれば、それは読者側が補完してくれた結果ではないかと考えています。
ーー外の世界を知らない子どもたちに寄り添い、まっすぐに語りかけるアナンダとシスターカオリの信念や言葉の数々がとても印象的でした。彼女たちは、どのような背景や思いから生まれたのでしょうか。
シスターカオリは、外の世界にうまく順応できなかった「大人と子どもの狭間」に位置する存在として描いています。彼女の信念や発言の多くは、社会とのズレや孤独感を抱えながらも、自己のアイデンティティを必死に模索した末に生まれたものです。
一方、アナンダは当方が思い描く理想の大人像を体現したキャラクターです。生身では成しえない完璧さを追求した結果、人間性を超越した存在であるサイボーグとして描きました。
ーー本作を通じて描きたいこと、伝えたいことはありますか。
本作についてはたった一つで、「お互いがお互いを信じましょう」。この一点に尽きます。
ーー今後の展望や目標をお教えください。
今後の目標はまだはっきりとは定まっていません。プロとして活動する可能性もあれば、アマチュアとして気楽に続ける道もあると思っています。形にこだわらず、継続して漫画を描き続ける方法を模索している最中です。
ーー作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
BIG LOVE______