ママ友に裏アカがバレた! 弱みを握られた結果、要求がエスカレート。ついには夫と不倫をさせてほしいと言われ…【書評】
公開日:2025/5/29

SNSで実名と関連付けられた表向けのアカウントとは別に匿名性の高いアカウントを持ち、そこで本音や私生活、時には過激な発言を発信する「裏アカ女子」。彼女らの中には、裏アカを本来の自分を表現できる唯一の場所として重要視している人も多いという。
しかし、裏アカの利用には少なからずリスクも存在するのが現実。もし匿名での活動が親しい人間にバレ、それが思わぬトラブルに発展したとしたら――。『裏アカ妻 夫の不倫相手をセッティングしたのは私です』(加藤かと/KADOKAWA)はそんなSNSトラブルを描いた作品だ。
主人公・エイコは、結婚して6年の主婦。毎日家事と育児に追われているが、夫からは感謝もされず、虚しい思いを抱える日々だ。挙句の果てには、セックスレスの夫から「おばさん」と心ない一言を浴びせられる始末。
そんなある日、エイコはSNSで偶然目にした「チャットレディ募集」の広告に惹かれ、怪しみながらも応募してみることに。初報酬で美容室へ行き、ショッピングを楽しんだエイコは、本来のキラキラした自分を取り戻す感覚に胸を躍らせる。さらに収入を増やすため、SNSでのPRにも力を入れるようになったエイコ。しかし、ついにママ友のヒトミに裏アカがバレてしまい――!?
本作の見どころは、インターネット社会における情報発信の便利さとその裏に潜む危険性が、ママ友同士の微妙な関係を通して非常にわかりやすく描かれている点だ。
公の場では自分の意見を抑制せざるを得ない人間にとって、匿名の場で現実と乖離した自分を演じる時間は、時に救いとなることがある。しかし、発信内容を適切に管理していなければ、最悪の場合、社会的信用を失ったり、悪質な犯罪に巻き込まれたりする恐れもあるのだ。
主人公・エイコとママ友・ヒトミのやり取りや関係の変化は、インターネット社会との付き合い方における立派な反面教師となるだろう。