「発達障害って言われたことない?」ネグレクトと精神的虐待をうけていた女性が、大人になってからADHDの診断をもらって…【書評】
公開日:2025/5/21

「大人のADHD」近年、耳にする機会が増えた言葉だ。
『家族から放置されて発達障害に気づかないまま大人になりました』(モンズースー:漫画、ネコゼ:原作/KADOKAWA)は、大人になってから発達障害と診断された著者の自分史を綴ったコミックエッセイである。
主人公のネコゼは、強迫性障害の治療中だ。彼女は整理整頓や時間の管理が苦手。気が散りやすくて集中して物事に取り組めない。他にもさまざまな点で生活に困難な面を抱えている。
「みんな多かれ少なかれそういった悩みはあるよね?」そう思っていたネコゼだったが、主治医が変わったことをきっかけに発達障害が発覚する。さらに、長年治療を続けてきた強迫性障害は、発達障害の二次障害だという。
肌荒れするほど手を洗う。年上の男性に対する嫌悪感で、全てを汚く感じてしまう。重度の強迫性障害により、外出するだけでも疲弊していたネコゼ。さらに、ルールが守れなかったり、複数人が話すと聞き取れなかったりなど、特性のせいで幾度となく苦しい思いをしてきた。
両親はなぜ彼女の発達障害に気づかなかったのか。そこには著者の生まれ育った環境が大きく影響している。
家族からネグレクトや精神的虐待をうけていた著者。加えて、兄たちには軽度から重度の知的障害があった。そんな環境の中で「普通」「いい子」を求められ、必死に生きてきた彼女。その姿に胸が締めつけられる。
長年苦しんでいた強迫性障害は発達障害の二次障害である可能性が高いと診断されたことからも、「もし親が気づいていたら」「もっと早く診断を受けていたら」そんな気持ちを抑えることができない。しかし過去を嘆いても変わらない。前へ前へと進む著者の姿からは勇気をもらえる。
作中に挟まれるコラムも必読! 今、生きづらさを感じている人に届いて欲しい1冊だ。
文=ネゴト / Ato Hiromi