夫の不倫相手が出産。息子まで手なずけて「早く4人で暮らしたい」? 厚顔無恥なシタ女へ接触を試みるが…【書評】
公開日:2025/5/20

パートナーの裏切りが発覚した際、取るべき選択は子どもの有無によっても大きく変わる。子どもがいる場合、子どもの心と生活の安定を守るために冷静な判断を下すのが親の務めだろう。しかし、肝心の子どもがすでに自分の知らないところで不倫相手に懐いていたとしたら……。
そんな一例を描いた作品が、『サレた私は夫の墓へ』(河野アカ:原作、おみき:漫画/KADOKAWA)だ。
主人公・由美は、夫と息子とともに暮らす主婦。一人息子が生まれてから早4年。由美は2人目を望んでいたが、夫には経済的な理由から拒否されていた。現在、すでに夫婦関係は希薄なものになりつつある。それでも由美は、平穏無事な日々におおむね満足していた。
しかし穏やかな日常は、息子のなにげない一言をきっかけに突如崩れ去る。「このひと、パパのことすきっていってた!」。テレビに映った女性を見て無邪気に笑う息子の言葉により、夫の不倫疑惑が浮上。
動揺する由美はひょんなことから、自分たちの結婚式に白いドレスで現れた“激ヤバ女”の存在を思い出す。彼女の名前は「あさ美」。夫が学生時代に所属していたサークルの元マネージャーで、先日息子が指さした女優にそっくりだった。
あさ美の写真を見せると、息子は「あ! あさみちゃんだ!」と大喜び。そして「もうすぐおにいちゃんになるんだよ」と衝撃のひと言を放つ。由美は疑念を確信に変え、夫を問い詰めようと決意するのだが――。
本作の見どころは、裏切られた怒りや悲しみを原動力に、夫と浮気相手への復讐を決意する主人公の心の動きがきわめて繊細に描写されている点だ。
知らぬ間に進行していた裏切りの実態が徐々に明らかになる中、主人公はひとりの女性として、そして母としての矜持をかけた選択を迫られる。驚くべき展開の連続に翻弄された彼女が最終的に下す決断とは? そして、物語を象徴する意味深な作品タイトルの真意とは――? サレ妻の孤独な闘いの結末を、ぜひ見届けてほしい。