研究室に転がるエナジードリンクと寝袋。理系研究室のハードモードな日常【書評】

マンガ

公開日:2025/6/2

 『先輩、実験が終わりません』(理系女ちゃん/KADOKAWA)は、理系大学生の日常をユーモアたっぷりに描いた新感覚4コマコメディだ。理系出身者なら「わかる……!」と共感必至、文系の人には驚きの連続だろう。研究室でのドタバタな日々を通して、理系のリアルな世界を楽しく覗ける1冊だ。

 物語の主人公は、帝国大学の一之江研究室に配属された大学4年生・雨宮青葉。配属初日、研究室を訪れると目の前に広がるのは、エナジードリンクと寝袋が転がる、まるで戦場のような空間。理系の世界ってここまでハードなのか……と、面食らってしまう。青葉が取り組むのは動物行動学。フィールドワークや長期の実験、膨大なデータ処理と格闘する日々には、根気と体力が求められる。度重なる実験や進路選択、数々の学会発表や論文に翻弄されながらも、少しずつ自身の研究ややりたいことと向き合って成長していく様子が描かれる。

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 本作の魅力は、ハードな研究だけでなく、就活や大学院試験などの進路、論文作成や学会発表といった学生生活の現実も丁寧に描かれている点にある。現場の息づかいが伝わってくる。文系出身の筆者としては、青葉たちの過酷な日々に驚きつつも、知らなかった世界への敬意や憧れを抱かずにはいられなかった。厳しい世界だからこそ、その中に光る熱意や努力には心を打たれてしまう。漫画だからこそ笑いながら、普段関わることの少ない分野や“ガチ研究”の裏側を覗けるのはとても貴重な体験だと、改めて実感した。動物行動学への細かな知識も得られ、読み応えも抜群だ。

 理系への苦手意識がある方も、テンポが良い4コマ漫画をベースに展開されるので、気になった話から気軽に読みやすいだろう。文系・理系を問わず、進路に悩む方や、研究室配属を前に不安を感じる学生に特におすすめしたい。また、かつて理系だった人も自身の学生時代を思い出して懐かしい気分になれるはずだ。ハードながらも、未知を探求する面白さに溢れた、理系の世界の奥深い魅力を存分に楽しんでほしい。

文=ネゴト / fumi

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