夜10時以降の“背徳レシピ”が食欲を刺激する。節制OL vs 腹ペコ女子高生、夜食をめぐる誘惑バトル【書評】

マンガ

公開日:2025/6/3

 読めば読むほど食欲をそそられ、彼女たちが食べる料理を食べたくなる。漫画『みだれたふたりのみたされごはん』(北斗すい/KADOKAWA)は、夜10時以降の食事を我慢しているOLと料理に疎くていつも腹ペコな女子高生が、背徳感のある食べものを前にして誘惑と葛藤を繰り返すガールズコメディだ。

 過去にはアイドルの研究生として芸能事務所に所属していたものの、今はふつうのOLとして働く氷上瑠奈は、ある日の仕事から帰ってくると、自宅前ですやすやと眠る女子高生を発見する。彼女は、瑠奈が住むアパートを管理する大家さんの娘・小泉一花だった。

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 ふたりの食に対する価値観はまさに正反対。どれだけお腹が空いていたとしても、無闇に暴飲暴食はしないと決めている瑠奈に対して、一花は食べる時間も場所も一切気にすることなく、目の前の差し出された食べものを口に運ぶ。

 そんな食へのスタンスが異なるふたりだからこそ、いっしょに食事をする際は自然と「助け合い」が生まれていく。日々、食事を節制している瑠奈はご飯をおいしく食べる方法を熟知しており、食へのこだわりがない一花にちょっとしたアレンジレシピを教える。すると一花は、おいしいごはんを作ってくれたお礼も兼ねて、贅沢な食事を我慢している瑠奈に自身の食べものをシェアしようとする。カロリーを気にする瑠奈も、最終的には無邪気に料理を差し出してくる一花の誘惑には抗えず、つい食べてしまうのだ。そんなふうに背徳感を抱きながらも「みたされごはん」の虜になる彼女たちの食事シーンも見どころのひとつだ。

 作品のなかで扱われている食べものは、冷凍食品やインスタント食品、ファストフードなど、誰でも手軽に手に入れられるものばかり。作中には、すぐ真似できるアレンジレシピも豊富に登場することも、読者にとってはうれしいポイントだろう。

 彼女たちが食事に満たされて、ごはんをおいしそうに頬張る姿は、きっと誰かといっしょに食卓を囲む時間の楽しさを思い出させてくれるはずだ。

文=ネゴト / ばやし

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