人生のどん底で再会したのは大嫌いな同級生。バターチキンカレーとライムジュースが繋ぐ2人のリスタート【書評】

マンガ

公開日:2025/6/8

 人生には思うようにいかず、孤独を感じる瞬間もある。そんな時、誰かと食べる美味しいごはんに力をもらった経験がある人もいるだろう。『スイート・ライムジュース 無敵の再会ごはん』(一初ゆずこ:漫画・原作、灯:漫画/KADOKAWA)は、人生に迷う女性2人が喫茶店を営みながら、それぞれ新しい道を探していく物語だ。

 頑固で堅実な性格の果澄と、自由奔放で美しい翠子。中学時代、果澄は自身の初恋相手を奪った翠子を強く恨み、再会したら絶対に「大嫌い」と伝えるつもりだった。だが、大人になった果澄は思いがけないかたちで翠子と再会。翠子に押し切られ、彼女の喫茶店を手伝うことに。最初は苦手意識を拭えなかった果澄だが、翠子の言動に込められた優しさや想いに触れるうちに、徐々に心を開いていく。実は翠子も果澄の意思の強さや誠実さを心から尊敬していたのだった。翠子の素直な言葉に触れた果澄は、自分でも気づいていなかった自分の魅力も知っていく。

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 性格は違っても、再会した2人の境遇はどこか似ている。果澄は、婚約していた恋人に仕事を辞めてまで尽くした末、浮気され破局。無職で孤独な状況に。翠子は妊娠中に夫の裏切りを知り、離婚して一人で生きる道を選んでいた。不安と向き合いながらも新たな一歩を踏み出した2人は、一緒にライムジュースやココア、バターチキンカレーといった様々な料理を作りながら力をもらっていく。喫茶店を訪れる人々と心を通わせながら、少しずつ自分たちの新しい居場所を作っていく姿は、読者も背中を押されるはずだ。

 そのほかにも、言いたいことを言葉にできない葛藤や親との関係など、誰もが抱える悩みにそっと寄り添ってくれる物語だ。各話の末尾には作中で登場した料理のレシピも紹介されているので、思わず作ってみたくなる。イラストやワンポイント解説が付いているので、楽しみながら作れるはずだ。物語とともに味わえば、きっと彼女たちの前向きな一歩が、あなたのお腹も心も満たしてくれるはずだ。

文=ネゴト / fumi

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