SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第47回「フェチ」
公開日:2025/5/27
その中で見つけたのが「小鼻のテカリ」だ。これがすごく好きであるということに私は気が付いてしまった。危ない危ない、もう少しで肌が出てれば全部OKってだけの浅はかな男に成り下がってしまうところだった。平凡な男に差し込んだ希望のヒカリ、あ、テカリ。
一体小鼻のテカリの何が好きなのかはよくわかりません。単純に、すごく生き物っぽさを感じるというのもさることながら、おそらくそこに見える若干の油断というか隙というか、そういうのが好きなんじゃなかろうか。気が付いたら隠しちゃうんだろうな、みたいなね。以前、膝の裏が好きだって言ったら、割ときちんと引かれ、挽回しようときちんと説明したところ悪い方向に拍車がかかった経験があるので、これ以上の具体性を帯びた説明はやめます。
はるか昔から脈々と受け継がれてきた動物的な性が湾曲して、現代で違った形で表面化されているフェチってやつに自分のルーツを思うと、これまで先祖たちはどんなふうに生きてきたんだろうと想像してしまう。
生き延びるために頭を使った結果、変な方向にいっちゃったり、慌てて軌道修正したり。対外的に些細な何かが幾度も繰り返されてきた結果かもしれないし、何か一発のっぴきならない事情があったのかもしれない。生きていくにあたって避けては通れなかった何かが、今の自分にも反映されてるんだなアと思うと、私が生まれる前からずっと生きてきたんだなアここまで、と無駄に感慨深くなったりもする。
得てして自分の過ごしてきた日々や経験したあれこれ、目にしてきたものなんかが、この後の命にもフェチって形で繋がるのかもしれないと思ったら、なんか面白いよね。
本当は、割と昔に、美容師(後に大嘘だとわかる)のお姉さんとお近づきになった時、この世のものとは思えないフェチをぶつけられ、ひよりにひよって半泣きで帰宅した時のエピソードを一緒に添えたかった。これが出来れば人間の業とか、そもそも人間とはって域のテーゼすら提唱出来た可能性もあったのだが。内容的に概要すら書けそうもないので断念、残念。
何せ誰もがハッピーで、どこみてもクリーン、コンプライアンス最重視でお送りしてますので私。これからもよろしくお願いします。
最後になりましたが何フェチですか?

しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。2025年4月に結成20周年を迎え、SUPER BEAVER 自主企画「現場至上主義 2025」を4月5日、6日にさいたまスーパーアリーナで行い、さらに、6月20日、21日に自身最大規模となるZOZOマリンスタジアムにてライブを行うことが決定。
自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中