現役巫女の作者が描く、笑って学べるお仕事漫画! オタクやギャルの巫女の日常には、知られざる神社のリアルが満載【書評】
公開日:2025/6/14

願掛けや初詣で神社に行くと目にする巫女さんたち。凛とした袴姿の彼女たちは別世界の神聖な存在に見えて、憧れを抱く人も多いだろう。だから実態や裏側を知る人は少ないと思う。『みこどもえ 現役巫女が描く世界一地味な巫女マンガ』(吉良さゆり/竹書房)は、現役の巫女として奉職中の作者が宮司の監修(と許可?)を受けて、巫女の本音や裏側をコミカルかつリアルに描いたお仕事漫画である。
登場するのは、日本のどこかにある架空の神社に奉職する個性豊かな3人の巫女。オタク気質で同人活動が趣味の鳥丸、かつてブラック企業で働いていた掘川、そしてタバコとギャンブルを愛するギャルの髙倉。すでにここまででどっぷり俗世に浸かっていることが分かる彼女たちの日常は、先ほど述べたような神聖な存在というイメージをいい意味で大きく覆す。
パチンコの戦利品のお菓子を差し入れしたり、神社のフリーWi-Fiを婚活や競馬にフル活用したり、巫女装束をコスプレに使えるか考えたり……。知られざる「巫女あるある」をふんだんにちりばめた現代女性らしさ満点のその姿は、普通の会社にいる女性社員たちの井戸端会議となんら変わらないので、読む前と読んだ後の巫女への印象が180度変わっているだろう。
とはいえ、巫女装束の構造や洗濯の仕方、お供え物の種類、授与品の管理方法といった私たちでは普段知り得ない話題や知識がたくさん盛り込まれつつ、お守りの期限や返納方法、御朱印についてや祈祷の意味など、参拝客として知っておくべき知識も満載。3人それぞれの悲喜こもごもな日常を面白おかしく読みながら、神社への理解も自然と深まるという実用性の高さも併せ持っている。
神社という場は、時代が変わっても形を保ち続ける数少ない空間だ。行くだけで背筋が伸びてしまうが、本書を読むと私たちが思っている以上にかなり身近な場所であることが分かる。もちろん最低限の礼節は持ちながら、もっとカジュアルに訪れて参拝してもOKと思わせてくれる作品だ。
文=ネゴト / fumi