「もう時間がない」と訴える妻と、「まだ」と言い続ける夫…子どもを持つか否かで反対の意見を持つ30代後半夫婦が選んだ道は?【書評】
公開日:2025/6/18

「夫婦で意見が分かれて揉めたことはありますか?」このような質問を投げかけられたら、多くの夫婦が「YES」と答えるだろう。とはいえ「今日の夕飯は魚か肉か」「旅行はどこに行くか」といったことなら、互いを思いやる気持ちで相手の意見を尊重すれば、そうそう大きな揉めごとにはなりにくい。
しかし夫婦の将来や自分の人生に関わる重大な選択となったら、どこまで相手を尊重すべきだろうか。『うちの夫は子どもがほしくない』(グラハム子/竹書房)の夫婦のように、子どもを持つか持たないかという選択に直面した場合、意見が異なっても相手への思いやりから自分の希望を諦めることが本当の幸せに繋がるだろうか。
本作の主人公は結婚5年目、36歳同い年夫婦のミカとシュン。ミカは子どもがほしいが、シュンは「まだ子どもはほしくない」と言って子どもの話題となると不機嫌になってしまう。年齢的にも焦るミカと、なにかと理由をつけて妊活を拒む夫。子どもへの希望を捨てきれず離婚も視野に入れていることをミカが伝えると、シュンはようやくミカの思いに気づき、子どもを作ることに同意する。しかし、その合意後もシュンは実際に子どもを作る行動に積極的ではなかった。
夫婦にとって子どもを持つか持たないかは非常に重要なことである。だから子どもを望む理由と、望まない理由をじっくり話し合うことは不可欠だろう。真意が隠されている「なぜそう考えているのか?」という掘り下げをしない表面的な対話では、夫婦間の溝を深めてしまうだけだ。
子どものことに限らず、親との同居や働き方など、夫婦間でお互い妥協できない問題を抱えている人はぜひ手にとってもらいたい。自分の人生や夫婦の関係を見つめ直す機会になるだろう。相手の考えをしっかり聞いて納得していくことで、理解がより深まり、自分たち夫婦にとっての最善の道をずっとふたりで歩んでいけるはずだ。
文=ネゴト / くるみ