「なし崩しになる」=「なかったことにする」という意味ではない/毎日雑学

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公開日:2025/8/1

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「あの案件は色々あって、なし崩しになったようだ」の意味は?

 この言葉を聞いてどのような状況だと思われますか?きっとほとんどの人が「うやむやになった」「なかったことになった」など否定的な意味にとらえるのではないでしょうか。しかし、本来、「なし崩し」とは「徐々に物事を進めていくこと」で、「なかったことにする」の意味で使うのは誤用なのです。 
 
 なし崩しの「なし」は漢字では「済し」と書き、もともとは「借金を少しずつ返済する」という意味で使われていました。ですから案件が進まない状況を表す場合は「あの案件は色々あって、まだ片付いていないようだ」や「白紙状態になった」「停滞している」「難航している」「遅々として進まない」などの表現がありあます。

■誤解されないために

 勘違いしている人が多い「なし崩し」ですが、 年齢別に見ると,本来の意味とされる「少しずつ返していくこと」は、全ての年代で「なかったことにすること」を下回っています。特に20 代は 15.8%~25.2%と非常に低く、全体でも約60%以上の人は「なかったことにする」の意味で使っているとのことです(文化庁国語に関する調査結果)。この状況では、いくら正しい意味でもむやみに使うと誤解される可能性がでてきます。では「なし崩し」の違う表現は着実に/一歩一歩/徐々に/少しずつなどがあります。状況に応じて使い分けましょう。

文=尾形圭子

尾形圭子

株式会社ヒューマンディスカバリー代表取締役
キャリアカウンセラー/人材育成講師/僧侶
航空会社と企業の人事部門を経て2004年に会社設立。ビジネスマナー、コミュニケーション、クレーム対応などの研修・講演活動を行うほか、福祉事業所や病院でホスピタリティを活かした「寄り添いの接遇」を指導。「言葉に心をのせて」を大切にしている。
著書は「一生使える電話のマナー」(大和出版)「すぐに役立つ大人のマナーブック」(JAグループ出版)など30冊以上。

※提供している情報には諸説ある場合があります。ご了承ください。

<第294回に続く>

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