「敷居が高い」と「ハードルが高い」のニュアンスの違いは?/毎日雑学

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公開日:2025/8/2

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「あの店は高級だから私には敷居が高くて入りにくい」の使い方

「敷居が高い」は「自分には高級すぎる」「入りにくい」「場違い」といった意味で使われることがほとんどですが、本来は「不義理なことや面目の立たないことがあってその人の家に行きにくい」という意味があります。そのため、「高級だから」を表現したい場合は「あの店は私には分不相応なので行きにくい」「ハードルが高い」「レベルが高すぎる」などが適切です。

■敷居とは

 さて、近年、和室が見直されているという話を聞きます。その和室に欠かせない「敷居」とは、部屋を区切るために敷く横材で、引き戸・障子・ふすまなどを開閉するためのもの、そして、門の内外を仕切るための木材のことです。「敷居が高くて入りにくい」の敷居は、その家の敷地の中と外の境を表し、「またぎにくいほど敷居が高い」という意味なのです。これは実際の高さではなく心理的な高さのことで、何か事情があってその家や部屋に入りにくいという気持ちを表現しています。

■敷居に関するマナー

 マナーとしておぼえていただきたいのが「敷居は踏んではいけない」ということ。そもそも「敷居」は古代の日本では、神聖な場所に設けられていました。これは、異なる空間に入ることを意味し、儀式的なものです。江戸時代からは一般家屋にも敷居がつけられたました。

■現代では慣用化傾向

 なお、近年、「高級すぎる」という意味も許容範囲となってきました。文化庁の「国語に関する世論調査」によると、2021年時点で「高級すぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい」という間違った解釈をしている人が56.4%にもなるとのこと。特に若い世代でその傾向が強いようです。2018年1月に発売された『広辞苑第七版』では「高級だったり格が高かったり思えて、その家・お店に入りにくい」という表現も追加されました。

 とはいえ、半数近くの方が本来の意味で使っていることを考えると、誤解のないように「分不相応」「ハードルが高い」などと表現した方がよさそうですね。

文=尾形圭子

尾形圭子

株式会社ヒューマンディスカバリー代表取締役
キャリアカウンセラー/人材育成講師/僧侶
航空会社と企業の人事部門を経て2004年に会社設立。ビジネスマナー、コミュニケーション、クレーム対応などの研修・講演活動を行うほか、福祉事業所や病院でホスピタリティを活かした「寄り添いの接遇」を指導。「言葉に心をのせて」を大切にしている。
著書は「一生使える電話のマナー」(大和出版)「すぐに役立つ大人のマナーブック」(JAグループ出版)など30冊以上。

※提供している情報には諸説ある場合があります。ご了承ください。

<第295回に続く>

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