「失笑」=「あきれた様子」ではない! 本来の意味は“おもわず笑ってしまう様子”/毎日雑学
公開日:2025/8/5

「彼の非常識な行動にあきれて失笑したよ」失笑の意味は?
「失笑」の本来の意味は「笑いを抑えきれずおもわず吹き出してしまう様子」のこと。たとえば、「大切な場面でいつもまじめな人が妙なギャグを言ったとき」「カクテルについてくるマドラーをストローと間違えて吸っている人を見たとき」など、不意を突かれて笑ってはいけない場面でこらえきれずに笑ってしまう状態を表しています。「笑いも出ないくらいにあきれた様子」や「不快に思う」などの意味ではありません。
ですから、「彼の非常識な行動にあきれて失笑したよ」という表現は、本来の意味とは違った誤用です。「あきれた」「不快だ」といった気持ちを表すのであれば、「彼の非常識な行動にはあきれて言葉もないよ」や「あきれて苦笑してしまった」などとなります。
失笑と苦笑をひと言で表すと「失笑」には滑稽さ、「苦笑」には不愉快さがあることをイメージするとわかりやすいと思います。
■慣用句の「失笑を買う」意味は?
本来の意味とは違う「あきれた」「不快だ」といったネガティブなイメージに誤解している人は70%にもなるそうです。その原因となったのが「失笑を買う」という慣用句で、「失笑を買う」は愚かな言行によって笑われることのため、「失笑」も「あきれた笑い」の意味で用いられることが多くなったようです。■本来の意味で言い換えは
笑いがこらえきれない場面では、誤解がないよう以下のような表現がおすすめです。
「プレゼンでいつもまじめな〇君がギャグを言って思わず吹き出してしまったよ」
「お寺で足がしびれて転んだら、あちこちから笑いがもれていたよ」
不意を突かれて笑う様子がイメージできて、誤解されることはないでしょう。
文=尾形圭子
尾形圭子
株式会社ヒューマンディスカバリー代表取締役
キャリアカウンセラー/人材育成講師/僧侶
航空会社と企業の人事部門を経て2004年に会社設立。ビジネスマナー、コミュニケーション、クレーム対応などの研修・講演活動を行うほか、福祉事業所や病院でホスピタリティを活かした「寄り添いの接遇」を指導。「言葉に心をのせて」を大切にしている。
著書は「一生使える電話のマナー」(大和出版)「すぐに役立つ大人のマナーブック」(JAグループ出版)など30冊以上。
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