里帰り出産中に夫が消えた? 夫にも不倫相手にも社会的制裁を。毅然と戦うサレ妻の姿にホレボレさせられる不倫復讐劇【書評】
公開日:2025/6/13

「たった1回だけ」。不倫の言い訳の常套句だ。しかしその「たった1回」がサレた側の心に深く突き刺さり、信じられないような痛みをもたらす。
『サレ妻になり今は浮気探偵やってます 里帰り中に夫が駆け落ちしてました』(コマ:原作、蒼衣ユノ:イラスト・漫画/KADOKAWA)は、そんな痛みを経験することになった女性の物語だ。
主人公のマキは、夫のトモヤと職場結婚し、待望の妊娠が判明。しかし夫のスマホには女性からの通知が届き、カードの支払い額が増えるなど、不審な点が増えていた。
子どもが生まれるとトモヤも父親らしくなったように見えたが、里帰り出産から戻る当日、マキが家に帰る時刻になってもトモヤは音信不通のまま。そしてトモヤから義母の元へ「父親になる自信がなくなった」との連絡が入る。
トモヤの不倫を確信したマキは、元サレ妻で現在は探偵事務所の相談員となったコマに浮気調査を依頼。徹底的に証拠を集め、武装を始める。
傷心のマキを支えたのは、家族と友人たちだった。探偵の調査結果を武器に、夫と不倫相手の両方に自分たちの行為がどれほどの罪か、どれだけ人を傷つけたかを突きつけるため、立ち上がる。
不倫シタ側はなぜか「これぐらい許されるだろう」と思い込み、非を認めないばかりか強気な態度でふんぞり返る。裏切り行為の重大さを「たった1度」と過小評価し、反対にサレた側を非難する。その「1回」がサレた側の心を殺し、どれほどの痛みをもたらすのか、シタ側には想像もつかないようだ。
不倫シタ側にサレた側の心の傷の深さは容易に伝わらない。だからこそ、目に見える形で償わせることが唯一の解決法なのかもしれない。
まるでモンスターと化した不倫相手、事の重大さを理解できない夫、支離滅裂な理論で論破しようとする義実家。それらと対峙するマキの毅然とした姿から、きっと勇気をもらえるだろう。理不尽な状況で苦しむ人に、ぜひおすすめしたい作品だ。
文=ネゴト / くるみ